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前立腺がんの手術を決意(1)


栗野的視点(No.828)                   2024年6月17日
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前立腺がんの手術を決意
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 「えっ、手術されますか」
 担当医は身体をのけ反らせて驚いた。
そんなに大げさに驚くか、と思ったが、担当医にしてみれば私の返事が想定外だったようだ。

 この日は7年前から3、4か月に一度のサイクルで行っている定期検査で、いつもは採血と採尿検査だが、半年に一度CT検査が加わり、さらに1、2年に一度MRI検査が加わる。
 主な目的はPSA(前立腺癌の腫瘍マーカー)の数値測定だが、この日は採血、採尿にレントゲン、超音波、MRI検査まで行われた。
 なぜここまで検査をするのかというと、ここ1、2回PSAの数値が急上昇していたからで、いままでのような経過観察ではなく手術とか放射線治療などなんらかの「積極的な治療を」考えるべきだと告げられていた。

 その段階で、自分の中では治療に踏み切る覚悟をしていたし、医師も「いままでのような経過観察ではなく積極的な治療を考えるべきでしょう」と告げたから、てっきり手術日の話になるのかと思っていると「本当はもう一度生検するのがいいんですが、生検は嫌でしょ。細菌に感染するリスクもありますしね」と、こちらの返事を勝手に代弁する。

 私はそれに反対したわけではなく、治療止むなしかなと考えていたが、担当医は治療を積極的に勧めるわけでもなく「本当はもう一度生検するのがいいんですが、生検は嫌でしょ。PSAの数値は他の要因で上がることもありますからね。今までも多少上がったり下がったりしていますから、もう一度検査してみましょう」と、それが私の返事であるかのように自答し、決めてしまった。

 それを聞き、1週間そこら後に再検査になるのだろうと思い「分かりました」と答えた。
 半年前に17.2に上昇したPSAの数値が、その3か月後の検査で21.2に急上昇したのだから、これはもう見守り観察を続けている段階ではない。癌が転移しないうちに手術した方がいいだろうと覚悟を決めた。
 前立腺癌は進行が遅いことで知られているが骨に転移すると手術も出来なくなる。そのために3か月に一度検査し、癌が局所限定に留まり、大きくなっていないか。他の部位に転移していないかを診ているのだ。
 だから再検査と言われた時、検査の正確度を期すため数日か1週間前後にもう一度検査するのだろうと考えた。

「では次の検査は〇月〇日にしましょう」
 その言葉を聞いてこちらが驚いた。
えっ、それって3か月後? それは定期検査のサイクルじゃないか。そんな後で大丈夫なのか。その間に転移したらどうするんだ、と。
 でも、まあ、担当医が言うのだから慌てる必要はないということなのだろうと解釈し、それ以上質問しなかったが、帰宅後パートナーから怒られた。

 本当にそんな先でいいの。先生はどう言ったの。なぜ、もっと聞かなかったの。今度は私も同席する、と。

 そして3か月後の5月某日。朝9時から諸々の検査を受け、おまけに、というのもおかしいが、何かミスがあったようで採血のやり直しまでされ、吸血鬼かお前たちはと心の中で毒づきながら、検査結果が出るまでの1時間余りを院内のコンビニでパンとコーヒーを注文し、どこぞの校長のようにレギュラーサイズにラージサイズの分量を入れることもなく、きっちりレギュラー分量を入れたコーヒーを飲みながら待つのが、検査日のルーティンになっている。
                            (2)に続く


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