汚染にまみれた生活環境が生命を脅かしている。(2)
〜国内産の食物も農薬漬け


国内産の食物も農薬漬け

 個人的なことだが岡山県北東部の田舎滞在中はほぼ毎日庭の草取りに追われている。道路側の庭はかつて家1軒が建っていた敷地で、今は更地にし駐車スペースとしてしか使ってないが、近所の人からは「もったいない。畑にすればいいのに」と言われる。そうしたい気もあるが常時滞在しているわけではないので、野菜を植えても手入れができなかったり収穫時期に居なかったりするからせいぜい道路側に花を植え花壇にしているぐらいだ。
 ただ、ここの草取りが大変で、滞在中は地面を這いずりながら雑草を取っている。春などは草取りをしても後から後から生えてくるからずっと草取りに追われている。それを見かけて「除草剤を撒けばいいのに」とアドバイスしてくれる人もいる。たしかにそうかもしれない。ホームセンターに行けば「ラウンドアップ」ほかの除草剤を売っている。それだけ需要があるということだ。

 一度だけ駐車場にしているスペースに除草剤を撒いたことがある。だが一度で止めた。ボトル1本撒いたぐらいでは効き目はない。雑草を枯らそうと思えば大量に撒くか継続して何度も撒かなければならない。
 中庭の方には2m×1.5m程の小さな畑がある。といっても何かを栽培しているわけではないが、青じそが生えたり西洋菜の花(正式名称は知らない)みたいな野菜が生えてくる。かつて弟が植えたもので、その後手入れもしないが種が落ちて毎年少しずつなくなりもせず生えてくるし、青じそは畑からはみ出て中庭一面に自生してくるから、時々収穫して食べている。だから中庭の方には最初から除草剤を散布していない。すべて手作業で雑草を抜いている。

 その延長線上で駐車場スペースの方も手作業で雑草を取っているが、これが大変。夏場は熱中症を警戒し早朝しか作業しないが、いいこともある。
 除草剤を撒かないから名も知らないような小さな草花が花を咲かせる。それを写真に撮り、花の名前を調べる。
 ミカンソウという花も数年前初めて知った。山椒の実ほどの小さな小さな実が葉の裏に連なって成る。それがミカンに見えるからミカン草という名が付いたのだが、草丈は低く葉を裏返して見ないと小さな実は見えないから、山野草に詳しい人以外は気付かないし注意を払うこともないだろう。
 だが実が成るということは花が咲くはずと思うが花が咲いているのを見たことがない。不思議に思い翌年注意して観察すると実が連なっている先の方に虫眼鏡で見ないと分からないほどの小さな白い花が咲いているのを見つけ感動した。
 こうした小さな発見と喜びが感じられるのも除草剤を撒かず「雑草という名の草」が生えてくれるお陰だ。

 ところで除草剤のラウンドアップ。いまやどこのホームセンターでも見かけるということは、それだけ使われているということだ。
 たしかに雑草取りは大変。田植え機はあっても草取り機はない。雑草だけを選り分けて取ることができないからで、そこは手作業に頼るしかないが、家内労働力は減っているし、従事者も高齢化が進んでいる。
 そうなれば除草剤散布で除草するしかないが、雑草にだけポイント散布することはできないから農作物にも当然かかる。これは果樹でも同じだ。
 後は量が多いか少ないかの問題だけで、危険なのは中国産だけでなく国内産農作物も同じだ。

 優れた除草剤として人気のラウンドアップはカナダで生まれた農薬。それ故カナダ産の動植物が中国産より安全とは必ずしも言えない。だから私は蜂蜜を買う時、カナダ産、アルゼンチン産はまず買わない。グリホサートという農薬成分が検出されているからで、まだ中国産の方が安全と言えるかもしれない。

 一時期、ミツバチの大量死が世界中で問題になったことがある。当初、諸説が唱えられたが、最近では農薬原因説に落ち着いている。養蜂家に話を聞いたことがあるが、彼らは農薬が原因と早くから言っていた。弱い生物がまず最初に被害を受けるということだ。

 除草剤を含む農薬類は「健康に被害はない」とメーカーは言う。だが2018年に米サンフランシスコ地裁は「ガンになった原因は除草剤ラウンドアップによるものだ」という被告の訴えを認め、農薬メーカー・モンサント社(現バイエル)に賠償金2億8900万ドル(後に7800万ドルに減額)を支払うよう命じている。

 人工化学物質が問題なのは影響がその地に留まらないからだ。農薬は散布中に空気中に漂い風雨により広く拡散し、離れた地域も曝露される。また農薬汚染された草や肥料を食べた動物の肉や乳を食べた人間も曝露されるし、地中に浸み込み地下水を汚染した水は川に流れ込み、取水された水道水を暴露する。

 かくして私達の生活環境は汚染され続けているが、国の機関が言うのは「ただちに健康に影響を及ぼすとは考えられない」量だという言葉。
 だから健康被害はない、規制しないといいと本当に言えるのか。
一時的な曝露は「ただちに健康に被害を及ぼす量でない」としても何年、何十年と継続的に曝露していれば体内に蓄積されていくわけで、ある時許容量を超えるということは十分にある。
 少なくとも健康によくないと言われている物質の摂取は避けるに越したことはない。それと根拠がない「国産神話」もやめた方がいいだろう。
                              (3)に続く

 


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