「生きてさえいれば」と言われた時代があったが、現在(いま)は生きていくことさえ難しい時代になっている。口に入れる食物が、飲む水が、空気が汚染され、知らず知らずのうちに健康がむしばまれている。
「トランス脂肪酸ゼロ」表示が消えた
朝食はパン、という家庭が増えている。ご飯と味噌汁という方が今では少数派ではないだろうか。
かく言う私も朝食はパンと青汁入りの牛乳だ。本当はご飯と味噌汁の方が胃腸の調子もいいのだが、食パンだとトーストで焼くだけで、その間に飲み物の用意ができるから一人の時は手軽で手間がかからないから、ついついパン食になる。
その延長線上でファミリーレストランやコーヒーショップのモーニングサービスでもパンとコーヒーの注文になる。
ところが、この食パンに問題がある。私は食品(ジャムや食パン、日本酒)を買う時、無造作に手に取り、そのまま購入するということがない。かならず裏側のラベルの原材料名を矯(た)めつ眇(すが)めつして購入する。
ジャム類では原材料名に書かれている順番を確認するし、日本酒は純米吟醸か純米、吟醸、本醸造酒という品質を確かめて買う。
ジャム類等は原材料名には多く入っているものから順に表示するよう定められているから、最初にブルーベリーとか柑橘類、オレンジと表示されているか、砂糖や水あめが最初にされているかによって内容物の比率が違う。仮にブルーベリーが3番目に表示されていれば「ブルーベリージャム」でもブルーベリーの含有量はそれほど多くなく、他のものの方が多い2級品ということになる。
食パンの場合、原材料名は各メーカーとも大体似通っていて「小麦粉(国内製造)」が最初に来て砂糖、バター入りマーガリンが次に表示されているが、ここで問題は2つある。
1つは「バター入りマーガリン」で、もう1つが「表示されていないもの」だ。「表示されていないもの」つまり隠されているものに問題がある。
何が表示されていないのか。
その前にイオンブランドの食パン「パン・ド・ミ」を見てみよう。
原材料名は「小麦粉(国内製造)、砂糖、オリーブ油、食塩、パン酵母、発酵風味料(小麦・乳成分を含む)、小麦たん白」となっている。
因みに「パン・ド・ミ」と同じ製造会社、フジパンの「本仕込」は原材料名に「小麦粉(国内製造)、砂糖、バター入りマーガリン、脱脂粉乳、食塩、食用油脂・・・」と表示されており、敷島パンの「超熟」も「小麦粉(国内製造)、砂糖、バター入りマーガリン、パン酵母、食塩・・・」と大体似たようなものだ。
「パン・ド・ミ」と「本仕込」「超熟」の違いはオリーブ油を使っているか、バター入りマーガリンを使っているかだが、ここで問題はマーガリンの使用である。
なぜマーガリンの使用が問題なのか。「パン・ド・ミ」は「3つのこだわり」として次のように表示している。
トランス脂肪酸ゼロ
マーガリンは使用せずにエキストラバージンオリーブオイルを
使用しています。
この表記から読み取れるのはマーガリンにはトランス脂肪酸が入っているから使用せず、代わりにオリーブオイルを使用しているということだ。
なぜ「トランス脂肪酸ゼロ」をわざわざ謳うのか。悪玉コレステロールを増大させ、動脈硬化、心臓病等のリスクが高まるほか、ガンや糖尿病、アレルギーとの関係も疑われており、欧米では食品への添加を禁じられているからだが、日本ではノー規制だ。
どのようなものに含まれているかと言えばマーガリンやショートニング、焼き物や揚げ物に工業的に生産されたトランス脂肪酸が多く含まれている。
だが、反芻動物の肉や乳にも含まれるなど自然界にも存在しているから話がややこしくなる。
つまりトランス脂肪酸を含んだ食品を扱っている側からは、自然界にも存在しているのだから、敢えて「トランス脂肪酸ゼロ」を声高に謳うのはおかしいという主張が出てくる。
実際そう主張したのが山崎パンで、それまで食パンパッケージに「トランス脂肪酸ゼロ」を表示していたフジパンの「本仕込」や敷島パンの「超熟」から「トランス脂肪酸ゼロ」の表示は消えたし、フジパンは「トランス脂肪酸ゼロ」を前面に出していたCMを取り止め、今では両社ともHPに「低減に努めている」と表示するにとどまっている。
一時は消費者サイドに立った製パン企業も内向きになり、消費者置き去り、世界に背を向け、日本の消費者はトランス脂肪酸が入った食パンや菓子パンを買わされている。
それでも原材料名の所に「トランス脂肪酸」と表示されていればまだ判別できるが、混合物の場合は表示しなくていいことになっているから、トランス脂肪酸が使用されていても別の原材料、例えばマーガリンだとかショートニングといった名称で表示されているから、ある程度知識がある人以外には見抜けない構造になっている。
国も企業寄りで欧米諸外国で規制されていても日本人は摂取量が少ないから健康被害は少ないとして規制する動きはない。
一度に摂取する量は少なくても長年摂取していれば健康に悪影響を与えてくるのは当然だが、そこは考慮しようとはしない。
「ただちに健康に影響を及ぼさない」から安全と言い切れるのか。決してそうではないだろう。
(2)に続く
#食パンから「トランス脂肪酸ゼロ」表示が消えた
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