懲罰から更生へと変わる刑務所、変わらない警察組織(2)
全裸にしてチェックした網走刑務所


全裸にしてチェックした網走刑務所

 学生の頃、刑務所の処遇改善に取り組んでいた助教授(当時)が講義の中で網走刑務所内の非人道的な処遇について次のような事実を語ったのは強烈な印象となり残っている。
「外での刑務作業が終わり戻って来ると男女ともに素っ裸にさせられ30-40cm幅の板が置かれた台の上を万歳の格好をして跨いで歩かされ、その後前屈の姿勢で尻を高く上げさせ、刑務官にチェックさせられる」
「極寒の網走で素っ裸にさせられること自体、非人間的な扱いだが、さらに男女ともに屈辱的な格好をさせられ、尻の穴などに何か隠していないかまでチェックするのだ」
「その後、自分達が抗議活動を続け、素っ裸にして板を跨いで歩かさせる行為だけはやっとなくなった」
 1960年代まで網走刑務所ではこういうことが何の疑問もなく行われていたのだ。

 江戸時代から連綿と続く自白強要の拷問による取り調べは少しずつなくなってきたとはいえ、なくなってきたのは拷問であり、自白強要はまだ全廃されたとは言い難い。
 刑務所内の処遇は外部に見えにくいだけに長い間古い体質のまま運営されてきたのは明治の「監獄法」が改正されたのが2006年6月という事実からして分かるだろう。
 名称が監獄から刑務所に変わっても、受刑者=犯罪者=悪人=懲罰対象、という考えは基本的に変わっていない。

 日本軍は日中戦争・太平洋戦争中に捕虜を「マルタ(丸太)」と呼び人体実験を行ったり虐殺してきたし、「クロブタ」「シロブタ」と呼び、夜陰に乗じて敵兵や現地人を殺害し、その人肉を食べたという証言もある。
 「シロブタ」が欧米兵を指し、「クロブタ」は現地人のことで、相手を人間ではなく「ブタ」と呼ぶことで人肉を食べる非人間的な行為を意識の中で少しでも和らげようとしたに違いない。

 刑務所・拘置所の収容者を番号で呼ぶのも、こうした考えの延長線上にある。そこには「罪を憎んで人を憎まず」とか更生させるといった思想などは微塵もない。あるのは犯罪者(犯罪者と見做された者)=悪人だから人間的に扱う必要はない、という考えである。
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