移動販売が流通を変える(4)
〜マックスバリューも移動販売(1)


マックスバリューも移動販売

 2011年に旧来型の移動販売ではなく新スタイルの移動販売を開始した小売り各社だが、当初は東北大震災の被災地域を中心に「移動仮設店舗」的な動きであった。組織的、継続的に本格的な移動販売に乗り出したのは「とくし丸」だけといっていい状態。他社は模様眺めで、この分野に本格的な参入は考えていなかったようだ。

 風向きが少し変わりだしたのは「とくし丸」がオイシックスに買収された2016年以降。「とくし丸」の提携スーパーが順次増えていき、地方で「とくし丸」の移動販売車を見かけることが増えてくるに従い、流通各社も「とくし丸」の動きを注視するようになる。

 相前後して買い物弱者の問題がメディアでも取り上げられるようになり、商店ゼロ地域や高齢者など実店舗に足を運べない人達への対応が求められだしたが、各社が出した対応策はネットスーパー。
 たしかに古臭い「移動販売」よりデジタル化に即したネットで注文してもらい当日〜翌日に配達するネットスーパーの方が選べる品数、効率面からいっても時代に即している。

 しかし、ここで対象にしているのは、ある程度デジタル操作に慣れている層で、そこにデジタルが苦手な高齢者や非デジタル層は含まれていない。ネットで購入するのは比較的若い世代であり、シニア層以上の世代が食品や日用品をネットで買う率は非常に低い。結局、本当に支援が必要な買い物弱者は置き去りにされ、見捨てられているのだ。

 だが2020年を境に潮目が変わった。COVID-19の大流行をきっかけに実店舗の来店客数、売り上げが減少。
 その一方でネットスーパーの売り上げは伸びたが、この頃から移動販売へ参入、あるいは移動販売地域を拡充する動きが顕著になる。

 例えばマックスバリュー西日本は2013年11月に山口県の3店舗で軽車両5台、配達用バン1台による移動販売を開始したが、その後2018年の広島市楽々園店が大型車両1台、配達用バン1台で開始するまでの5年間は移動販売を増やしていない。
 「とくし丸」が2016年以降提携スーパーを増やしていったのとは対照的で、イオン系スーパーにとって移動販売は魅力的なビジネスモデルとは映らなかったようだ。
 ところが2020年以降、兵庫、岡山、徳島、島根、鳥取、香川、高知の各県で順次、軽車両による移動販売を開始した。これはマックスバリュー西日本の全営業エリアになる。
 移動販売車(マックスバリュー西日本では「おまかせくん」という名称で各地を巡回している)による販売は利用者「スーパーで混雑した環境よりいい」と好評で、同社も「客数が増加した」(同社広報担当)と移動販売の効果を認めている。



 「おまかせくん」の販売価格は、同社も「とくし丸」同様、店頭価格+1品に付き10円(税別)の手数料を上乗せしている。ただし「支払いは備え付けのレジで現金、WAONカード、クレジットカード、電子マネー、イオンPAYなどが使える」(兵庫県佐用店の販売担当)のが特徴。
 取扱商品は牛乳、豆腐、パン、惣菜、飲料、お菓子、調味料、野菜・果物・魚・肉などの生鮮食品、トイレットペーパー・洗剤等の日用品約400品目。その他に要望があれば次回の時に配達してくれる。

 佐用店は軽車両での移動だが、たまたま取材時には中型車両が止まっており、冷凍庫も備えられていて「アイスクリームがよく売れますよ」と担当者が話してくれた。暑くなるこれからの季節、アイスクリームを持って来てくれるのは嬉しいだろうなと思ったが、軽車両には冷凍庫まで備え付けてないのでアイスクリームは難しいかもしれない。

 個人的に関心を持ったのは、調味料の分類に入るのかフリカケが積まれていたこと。販売担当者によると「結構需要がある」とのこと。
 そのほかキャンディ類も結構載せられており、効率を考えれば単価の高い商品の方がいいだろうが、売り上げもさることながら地域の要望に応える姿勢を優先していることに感心した。
                                   (5)へ続く

#マックスバリューの移動販売 #おまかせくん


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