私の実家がある地域は合併して市になる前の旧〇〇町の中心部ということもあり、すぐ近くに銀行、郵便局に食堂を兼ね備えた食品コンビニとでも呼べる「つるや」、さらに台湾料理店もあるから商店ゼロ地域というわけではないが、それでもスーパーの商品を目の前で選びながら買えるのは嬉しい。
日常の買い物なら車で10分余りのスーパーまで行かなくても移動販売が来ればなんとかなりそうと私自身感じたほどだ。
少し奥の集落には「とくし丸」の移動販売が数年前から来ているのは知っていたし、マックスバリュー西日本の移動販売車も播磨西地区、兵庫県佐用店で見かけ、その場であれこれ尋ねた後、広島本部とメールのやり取りで取材したり、神戸コープの移動販売車も見かけて、あれこれ尋ねたり、大分県ではコープ大分の配達車が商品を届けに来たついでに食事休憩していくのをいいことに、お茶を出しながらあれこれ質問をするなど根っからの好奇心が疼き、ついあれこれ質問し情報を収集している。
◇異業種の参入で苦境に立つスーパー
今、スーパーの準主戦場は過疎の地方に移りつつある。コロナ禍の時は巣籠もり需要で売り上げは伸びたが、コロナ禍も落ち着き以前の生活スタイルに戻るにつれスーパーの売り上げは落ちている。
売り上げ減の理由は他にもあり、他業界からの進出が相次いでいるからだ。その1つはコンビニエンス業界で、総菜などの食品も充実させ、スーパーの市場にじわじわと進出しようとしている。
もう1つは異業種からの進出。これにはAmazonや楽天市場などのネットスーパーとドラッグストアやディスカウントストアの2つがある。
特にドラッグストアの食分野への進出は積極的で、以前のように食品は集客目的で利益率が高い薬類で利益を出すという手法から脱し、食品棚や冷凍ケースを増やしたり、中には生鮮品も扱う店もあるなど食品のウェイトを高めつつある。
といって薬品関係のウェイトが減少しているわけではないが、新たなドラッグスーパーとして従来の食品スーパーの市場を食う形になっている。
生鮮食品や総菜など日配と呼ばれる分野はスーパーの実店舗で買う消費者がほとんどだが、それ以外の商品、重いもの、嵩張るもの、日持ちがするものはネットで購入する商品が増えている。
ネットスーパーの中心購買層は都市部の若者や共働き、未就学児童を抱える層だが、高齢者層でもネットスーパーの利用は微増傾向にある。購買品は米、水、トイレットペーパーなどの重いもの、嵩張るものが中心だが、これらを高齢者本人が注文するだけでなく、親と別の場所に居住している子供世帯が高齢の親に代わってネット注文し、配送先を親元にしているケースもある。
では今後、ネットスーパーのシェアが食分野で拡大していくかといえば、そうではないだろう。たしかにPCやスマートフォン(スマホ)があればどこにいても、誰でも注文できる時代だが、クレジットカードその他のキャッシュレス決済を嫌ってネットで買い物を控える層は一定数いるし、この層が激減することは今後もあまり考えられない。
また高齢者に限らず実店舗で商品を目で選びながら買いたいと考える消費者も多く、ネットと実店舗での購入を上手に使い分けていくのは今でもみられる行動であり、今後もこうした買い物行動は続くと思われる。
それ故、ネットスーパーが一大勢力になり実店舗が消滅することはないだろう。とはいえ人口減の日本社会で、実店舗が減少していくのは避けられない事実だ。
このように食品スーパーを取り巻く環境は厳しさを増しており、スーパー各社は今回のフジとマックスバリュー西日本の経営統合に見られるように、業界の再編成が今後起きてくるだろう。
では今後ネットスーパーが一大勢力になるかと言えばそうとは思えない。できることなら実店舗で買いたいと考える消費者が消えることはなく、ネットの買い物に慣れた若者層もすべてをネットで買うのではなく、それぞれの特性を上手に使い分けて買い物をしているからで、この傾向は減少してもなくなることはないだろう。
消費者がネットに流れるのはトータルコストパフォーマンスのよさで、そこには今流行りの「タイパ」、タイムコストパフォーマンス(時間コスト)も含まれる。
要は買い物に出かける時間を省くことができるからだが、逆に言えば商店がすぐ側に来てくれれば出かける時間は省け、目の前で商品を見ながら買えるわけで、それを望む消費者は昔から存在している。
そこに移動販売が生まれる需要もニーズもあり、スーパーが生き残れる道もある。
これは言い換えれば客が来てくれるのを待つ商売から、客がいるところに出かける「攻めの商売」でもある。
(3)に続く
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