腹帯の前方、ちょうどベルトのバックルに見える所に付けられた飾り物は磨崖仏の武神などでも見た記憶があるし、福岡市・櫛田神社や佐賀県多久市・孔子聖廟の拝殿上の横柱中央に拵えてある魔除けだが、その名称が出て来ないのと、神社の飾り物と武人の腹帯の飾り物は同一なのか、なぜベルトのバックル位置に装身具を付けているのか知りたかったが、そんなものに興味を持つ人間はほとんどいないようだ。
参照:ブログ「地方を旅する面白さ〜饕餮(とうてつ)」
http://blog.livedoor.jp/kurino30/archives/52611411.html
寺建築でよく見かける木鼻でさえ注意を払う人はいないどころか、その寺の住職でさえ木鼻に関心がないほどだから。
「唐人屋敷には中国人しか入れなかったのですよ。だが、唯一、出入りが許されたものがあります。何か分かりますか」
これ以上変なことを尋ねられては困ると思ったのだろう、案内所の年配女性は話を別の方向に振ってきた。
こちらが考え込んでいる様子を見て「遊女だけなんです」と得意げに答えた。
なるほど遊郭・円山は比較的近くに位置している。セックスは時代も人種も国も簡単に超えてしまう。そこまで禁止するとかなりの揉め事になるということか。
こちらの反応に気をよくしたと見え、「面白い話を教えましょうか」と身を乗り出してきた。
「皇帝パレードに今年は福山雅治が来ているでしょ。私らは福山のどこがいいのか分かりませんが、福山が高校生の頃、女子高の生徒に人気があってね、福山が通るとバスに乗っている女子高の生徒が福山が見える方に一斉に移動するそうです。それでバスが傾いたという話があるんですよ」
「饕餮(とうてつ)」と「獅喰(しがみ)」
翌日は中央公園会場、孔子廟会場を巡る予定を取りやめ興福寺に向かった。
興福寺は以前来たことがあると思っていたが、山門の前に立って初めてだと気付いた。行ったことがあるのは崇福寺で共に有名な寺だから混同していた。
「当寺は黄檗(おうばく)宗で、日本で最初の寺です」
入り口で入山料を支払った時、そう説明された。
「黄檗宗? あまり聞いたことありませんね」
「黄檗宗は曹洞宗、臨済宗などと同じ禅宗の一つです」
「日本で最初の寺なんですか」
「はい、当寺が日本で最初の黄檗宗の寺です」
これはなにやら面白そうだと感じ、興味が湧いてきた。
「ここに唐人屋敷の門が移築されていると聞きましたが」
「はい、この奥にあります。パンフレットにも書いてあります」
と詳細は小さなパンフレットを読むようにと門番の僧侶から促された。
本堂に向かうとランタンフェス中だからか御朱印受付のためと思われる女性が本堂の端の方にテーブルを出して腰掛け、観光客に説明をしていた。
「この魚板は雌雄一対になっています。こちらが雄で向こうにあるのが雌ですが、雌雄一対の魚板は非常に珍しいです」
魚板とは魚の形をしたものを水平に吊るし、木槌で打って僧達に食事時刻を知らせるもので「雄は玉を咥え、雌は口を閉じています」。
なる程、獅子と同じ形かと思っていると「雄が口に含んでいる玉は欲望で、腹を叩いて欲望を吐き出します。雌の方は口を噤み、欲望を飲み込んでいる形です」と説明され、妙に納得。
(3)に続く
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