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裸の王様になった大統領
「私を止められるのは私だけだ」
「私に国際法など必要ない」
この発言を聞いて、いつの時代に、どこの国の、誰が発した言葉か分かるだろうか。
前世紀? もし21世紀だとすれば北朝鮮かロシアあるいは独裁政治を行っている国の指導者と、思うかもしれない。
間違っても民主主義国家の今の指導者だとは誰も思わないだろう。
ところが、上記の発言をしたのは民主主義国家を標榜しているアメリカのトランプ大統領と聞けば驚くに違いない。実際、私は驚愕し、我が目と耳を疑った。
トランプ米大統領が上記の言葉を述べたのは今年1月、ニューヨーク・タイムズのインタビューでである。
いままで数々の事実を「フェイク」だと言い、地球温暖化もフェイクだと認めなかった彼のことだから少々おかしなことを言っても「またトランプの戯言か」ぐらいに聞き流せるが、さすがにこれはひどい。
なぜ酷いかと言えば民主主義国家は独裁国家と違ってリーダーの意のままに何でも決められるものではないからだ。
リーダーあるいはその国の権力者が国民の意見を聞かず勝手に好き勝手に決められるなら国の経済も富も自分のものにできる。
実際、独裁者はそうしてきたし、自分の身内を要職に付け、身内で富を分配している。
次には自分に反対する、あるいは自分と違う意見を述べる者を退け、自分に従う者のみを登用していく。
例えば毛沢東の中国で行われた「大躍進政策」。
無謀な計画を建てられ民衆が駆りだたされた結果、数千万人に上る餓死者が出た。毛はそのことを本当に知らなかったのかどうかは不明だが、えてして権力者は耳に痛い話(数字)は信じない(信じたくない)から、問題を他にすり替えて事実を報告する者を批判する。
毛沢東の場合は大躍進政策を批判した国防部長の彭徳懐(毛の右腕だった)が大躍進政策の現実(経済疲弊、餓死者)を毛に報告したが、逆に権力闘争に擦り替えられ失脚し、それに続く文化大革命で紅衛兵による激しい拷問・監禁で彼は死去した。
その後、国家主席に就いた劉少奇が大躍進政策による飢餓を「3分の天災、7分の人災」と評価し、党の誤りを認め、中国経済を立て直した。
この時に毛沢東は自己批判しているが、それが許せなかったのだろう、その後劉少奇を標的にした文化大革命を起こしたのは知られているところだ。
このように権力者は自分を批判する者は絶対に許さない。
それは独裁国家であろうとなかろうと似たようなものだ。
「男の嫉妬ほど怖いものはない」と言われるが、まさにその通りである。
ただ誤解がないように付け加えておくと毛沢東は身内を登用したり富を指摘に独占したりすることだけはなかった。
似たようなことは日本でも起きている。ニデックの創業者・永守重信氏は自分の計画を絶対視し、部下に「すぐやる、必ずやる、出来るまでやる」を強制し、数字が達成できない幹部達に「どいつもこいつもやる気なしの無責任野郎ばかりばかり揃いやがって! 全員辞めてくれや!」と激しく罵っている。
結果、時期社長含みで外部から招聘した人材は短期間で相次いで辞職・退職したし、社内には不適切会計が日常茶飯事のようにまかり通っていたことが最近明らかになった。
しかし今までメディアも経済界も永守氏を名経営者と持ち上げ、取り上げていたのだから、責任の一端は彼らにもあるのでは。
もう一度トランプ大統領に戻ろう。
米国務省は8月18日、国際刑事裁判所(ICC)の赤根智子所長とICC上級弁護士・アブドゥライ・セイ氏(セネガル出身)を制裁対象にしたと発表。制裁されると在米資産の凍結、米国への渡航が禁止される。
これらの措置がトランプ大統領の指示なのは言うまでもないが、今回の制裁対象には赤根氏を含めICCの裁判官18人中9人が含まれるという異常。
まさにICCという組織に対するトランプの制裁といえる。
制裁理由はイスラエルのネタニヤフ首相に対する逮捕状発行や米兵の戦争犯罪を巡る操作容認等を米国政府は挙げている。
まさに「私に国際法など必要ない」と言った言葉通りだ。
ここまで来ると民主主義国家の大統領ではなく、完全にトランプ王国の王だ。
(7)に続く
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