栗野的視点(No.848) 2025年2月11日
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国立大病院の赤字拡大で崩壊する地域医療
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地方の小さな診療所でも胃カメラ検査が
兵庫県境と接する岡山県北東部の小さな田舎町(一応、市ではある)が私の出身地で、数か月おきに福岡と行き来する生活を送っている。
田舎町だが市内には美作三湯(みまさかさんとう)の一つで知られる湯郷(ゆのごう)温泉があり、高速道路のインターチェンジも近いから、1時間半も走れば神戸市、鳥取市まで行けるし、淡路島までも2時間で行ける。
といってもそうしたことが分かってきたのはこの10数年のことで、それまではこんな田舎では生活できないと敬遠していた。
一応、市内にはイオン系スーパーや、イズミのゆめマートのほかヤマダ電機、エディオンなどの家電量販店もあるが、徒歩圏内にはそれらはないから帰省しても短期滞在で1、2か月も滞在して生活することなど考えもしなかった。
ところがホームセンターとドラッグストアがオープンし、ドラッグストアではちょっとした食料品も売られているし、1年前からスーパーの移動販売車が週1回回って来るようになると、車がなくても日常生活は困らないのではと思い始めた。
唯一、懸念があり都会と決定的に違うのが医療機関だが、これも調べてみると市内に公立病院が1つあるほか隣接する町と、兵庫県側の町に総合病院があり、さらに高速道路で30分も走れば県北の中核都市に総合病院を含め複数の医療機関があることも分かってきた。
その都市には数年前、最先端の重粒子線治療施設もでき、一時は前立腺癌の治療はそこでしてもいいかと考えたぐらいだ。
まあ入院が必要な場合を除き必要なのは風邪を引いて熱があるとか、胃の調子が悪いなどといった時に診察・検査してもらえる医療機関の方だが、徒歩圏内にあるのは外科医院。院長は80歳を少し超えているのではと思うが、内科医の息子が帰ってきて外科・内科医院になったから、地域から民間医院が消えることはなくなったので安心。
それ以外に実家の我が家の向かい側に市立の診療所があり、地区の健康診断などもその診療所で行われているから一度内部を覗いてみたいというか、面通しぐらいはしておいた方がいいかもと考えていた。
というのも私の健康保険証は福岡の住所になっている。住民票があるのは福岡だし、福岡と、岡山県を行き来する2拠点生活に近い暮らし方をしているといっても福岡に居る時間の方が長いから当然だが、帰省中、診療所の医師はもちろん看護師たちと顔を合わせたこともないから怪しいよそ者と思われるのも困る。
困るといえば問診票に記入する住所で、いつも窓口で尋ねている。
「住所は福岡だけど今はこちらにいますが、住所はどちらを書いた方がいいですか」
そう尋ねるとまあ大抵の場合は
「今いるこちらの住所を書いてください」と言われるはするが。
昨夏、帰省中に頭痛が数日続いたので、いい機会とばかりに診療所で診てもらうことにした。
今まで頭痛がしたことはなく、福岡に居る時から頭痛が続いていたので一度脳神経外科で診てもらった方がいいかと考えていた。地方の診療所ではCTもMRIもないことは分かっていたが、取り敢えず診療所の調査(?)に出かけた。
待合室で待っている時、目に入ったのが「胃カメラ検査」という文字。へえ〜、胃カメラ検査ができるんだ、と感心しながら貼り紙の文字を追うと「毎月〇曜日」「事前予約が必要」とあった。
月に一度でも、事前予約でも、地方の診療所で胃カメラ検診が出来ることに正直驚いたし、地方だとバカにしたことを恥じた。
頭痛の方は老齢の医師が頭痛薬を処方してくれただけだが、支払い時に窓口で胃カメラ検査について2、3言葉を交わした。
「はい、岡大から先生がお見えになります。鼻からも入れられますよ」
「えっ、喉からではなく鼻から入れるやつ。進んでるね〜」と驚いた。
福岡の大病院でも鼻からチューブを入れての胃カメラ検査は受けたことがない。といっても最後に胃カメラ検査をしたのは10年ほど前になるが。
そうか、岡山大学医学部と提携していて、そこの医師が来るなら検査もしっかりしているだろう。
胃カメラができるなら大腸カメラもできるのではないかと思ったが、大腸カメラ検査はできなかった。大腸検査は患者の事前準備も大変だし時間もかかるからだろう。
それにしてもこんな地方の診療所がよく連携できているなと感心し、これなら地方で生活しても問題はなさそうだと思いもしたが、そうは問屋が卸さなくなってきたのが昨今の事情。
(2)に続く
#国立病院の赤字で崩壊する地域医療
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