栗野的視点(No.861) 2025年6月20日
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キーボードとヘバーデン結節と断筆
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ もう何年も騙し騙しやってきた。
だが、いよいよ限界を意識せざるを得ず、今流行りの「終活」なんか絶対しないと思っていたが、この頃「是非に及ばず」の心境になってきた。
断筆(正確に言うと断キーボード)の話である。
長年、目と指を酷使し続けた結果、日常生活にまで影響が出始めた。
毎朝、神棚にお詣りする際の柏手が上手く打てない。
顔を洗う際、両手で水をすくうことができず、右手でしか顔を洗えない。
飯碗や汁椀を左手で上手く持てない。
咄嗟の時、左手で物を掴めない。
いずれも左手の指が開かないからで、左手でジャンケンをするとチョキ、グーは出せるが、パーが出せない。
こうなった理由は分かっている。長年の打鍵による疲労、腱鞘炎だ。
最初は小指が伸ばせなくなり、内側に曲がったままになった。しばらくたって薬指が、さらに中指が続き、今では左手の打鍵は人差し指の1本打ち。
今度は人差し指ばかり使うものだから、左手人差し指が第1関節から左側に曲がってきた。
キーボードに最初に触れたのは英文タイプライターで、大学2年生の頃だ。
英文タイプはオリベッティ製が有名だったが高くて手が出せなかったので、それより安い国産のブラザーのタイプライターを買った。
オリベッティとの決定的な違いは打ちやすさ。キーボードが固いか軟らかいかで、ブラザーは打鍵時に力がいった。そのため長時間使っていると肩が凝る。
タイプを買った理由は洋書のコピー。当時、洋書、特に哲学書は丸善に注文して手元に届くまでに3か月かかった(ドイツから船便で送られて来るため)。
そのため急ぎ欲しい洋書は大学の図書館で借りることにしたが、貸出期間は1週間と短い。だが、教授に借りてもらえば返本期間が1か月に延びる。そこで教授に借りてもらい、それをタイプライターで打ってコピーすることにした。
タイプで写すことで哲学の勉強と英語の勉強ができる一挙両得と考えたが、タイプで打ち写すのは作業だから英語の勉強には全くならなかった。
英文タイプだからキーはアルファベットのQWERTY配列。これが後にワープロ、パソコン(PC)でも役に立ち、入力で困ることはなかった。
(2)に続く
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