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分断する社会では独裁化が進む。(4)
〜人は小さな嘘より大きな嘘に騙されやすい


小さな嘘より大きな嘘に騙されやすい

 社会の分断化が怖いのは、それぞれの社会で内に向かうベクトルが強くなり、外に対しては排他的になっていくことである。それはオウム真理教やカルト教団などで顕著に見られたが、集団には大なり小なりそうした傾向が付きまとう。いや、もっと言えばベクトルが内側に向かわない集団は結束を欠き瓦解していくため、強弱はあるものの集団が集団であるためには内に向かうベクトルは必要条件でもある。
 この時に重要なのはリーダーが指し示す方向、発する言葉である。言い換えればリーダーの指示により、その集団は動かされ、リーダーの資質が集団の資質を決める。
 ただ往々にして高潔、清廉で正義や理想を志すリーダーの言葉より、集団を構成する者達の不満を煽り、他者に対し激しく迫るリーダーの方に人々は引かれ、付き従う傾向がある。

 不安な状態に陥っている時ほど人は理性より感情、損得で動く。それをうまく利用し、人々を扇動したのがアドルフ・ヒトラーで、彼は宣伝戦、演説に長けていた。
 そしてヒトラーの宣伝手法を熟知し、それを忠実に真似、実行したのがナチスの宣伝相、ヨーゼフ・ゲッベルスで、彼は宣伝について次のように語っている。
「もっとも速度の遅い船に船団全体の速度を合わせる護送船団の如く、知識レベルの低い階層に合わせた宣伝を心掛ける」
「大きな嘘を頻繁に繰り返せば、人々は最後にはその嘘を信じる」

 ヒトラーの手法を現在に蘇らせたのがトランプ前大統領で、彼は大統領就任以後ツイッターをうまく利用し、フェイクニュースを繰り返し流し、現状に不満を抱く大衆を彼の信者へと変えていった。

 人は小さな嘘より大きな嘘に騙されやすい。例えば「徳川の埋蔵金」や「M資金」「NASAでも使われている技術」という言葉に弱く、詐欺まがいの話を信じ、被害に遭った例はそこそこある。さすがに最近でこそ耳にしなくなったが、「M資金」に関する話は何度も繰り返し現れ、その度に騙される人が出ていた。
 なぜ人はこうも容易く荒唐無稽な話に騙されるのか。身近な話は真偽を確かめることができるが、大きすぎる話は真偽を確かめることができないからである。

 「埋蔵金」や「M資金」「NASAの技術」という話は当初、一笑に付したとしても「もしかすると」とか「ありうるかも」と思わせてしまうものがある。そこに別の賛同者が加わり「実は自分も最初は疑っていたけど・・・」と相手の疑念を晴らすような話をすれば、彼が彼女がそう言うなら本当だろうと思い、詐欺まがいの話に乗ってしまう。ましてや相手が大統領ともなれば、「嘘を言うはずがない」と信じてしまう。

 荒唐無稽な話ほど人は騙されやすい。ただ、そこに小さな真実をほんの一握り入れさえすればいい。その小さな真実があることで残りの部分をすべて信じるようになるからで、これは占い師などがよく使う手でもある。
 昔、某姓名判断師に話を聞いたことがある。なぜ、友人の怪我のことが分かったのかと。その姓名判断師は本も出していて、そこそこ有名な人だったが、彼が言うには「右利きの男性は右足を怪我することが多いから、子供の頃、右足を怪我したか盲腸の手術をしたでしょ、と言えば大抵当たる。盲腸の手術をしてなければ、今後、虫垂炎になるから注意するようにと警告する」と。
 コツは最初に何かを当てることで、それが当たれば後は相談者が皆都合よく解釈してくれるらしい。占い師のところに来る人間は何らかの悩みを抱え、それを相談しに来るわけで、悩みが何かを顔色や素振りなどからいかに早く見当を付け、そこを突いていくのだそうだ。
                                              (5)に続く

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