ダイハツの不正は25項目に及ぶ
直近の不正発覚ではダイハツ工業が挙げられるが、同社の不正は悪質極まりない。
まず、不正箇所が25項目に及ぶなど多すぎる点が1つ。次に30数年前から不正が行われ続けていたという点。
25項目の中には他社でも行われていたものがあることを見れば、不正箇所や方法は業界である程度共有されていたのではないかと疑いたくもなる。
以下にダイハツ工業が行っていた不正箇所を挙げてみると--。
1.側面衝突試験
2.ポール側面衝突試験
3.オフセット前面衝突試験
4.フルラップ前面衝突試験、5.フルラップ前面衝突時の燃料漏れ試験
6.歩行者頭部および脚部保護試験
7.後面衝突試験
8.ヘッドレスト(HR)衝撃試験、9.ヘッドレスト(HR)静的試験
10.シート慣性荷重試験
11.積み荷移動防止試験
12.ヘッドフォーム(HF)インパクト試験
13.とびら開放防止試験
14.座席ベルト試験
15.ヒップポイント試験
16.車外騒音試験
17.近接排気騒音試験
18.制動装置試験
19.ヘッドランプレベリング試験
20.デフロスターによるデミスト試験
21.デフロスターによるデフロスト試験
22.速度計試験
23.インスツルメントパネルの衝撃吸収試験
24.排出ガス・燃費試験
25.原動機車載出力認証試験
側面衝突試験とは側面から衝撃を受けた時ドアロックが解除されるかどうかを確認する試験だ。ドアロックが解除されなければ搭乗者が車内に閉じ込められてしまうから安全性に関わる重要な問題である。
ところが、ドアロックがきちんと解除されないのに解除されたように誤魔化し試験をパスさせる不正は他社でも行われていた。
またフルラップ前面衝突試験は実際に衝突させてエアバックがきちんと作動するかどうかを確認する試験だが、タイマーで運転席、助手席のエアバックを作動させて試験したというから驚愕する。
もしもの時に登場者を守るエアバックをこんな方法で作動させ試験を行っていたわけで、そこにはユーザーのことなど微塵も考えていないし、これだけ多くの項目で不正が行われていたことを考えれば不正は組織ぐるみと見られても仕方ない。
不正が相次ぐ自動車メーカーの中で不正に手を染めていないように見えるのがトヨタだが、日野自動車もダイハツ工業もトヨタグループである。
そしてダイハツ工業のトップはトヨタの出身者が数代続いていることを考えれば「トヨタは大丈夫」と言い切れるのかどうか。
トヨタ出身の社長は現場の不正に気付かなかったというならトヨタ在籍時にも現場のことには目を通していなかったのではないだろうか。
今回の不正問題とは少し外れるが、ここ数年問題になっている「ブレーキとアクセルの踏み間違い」による車の急発進事故。当初はトヨタのプリウスが問題になっていたが、その後、他メーカーの車でも「踏み間違い事故」が起きている。
一つ気になるのはハイブリット車を含め最近発売されている車に搭載が増えている「電子制御シフト」との関係である。
「電子制御シフト」は従来のシフトレバーと違って操作が分かりにくい。従来型のシフトレバーはレバー位置で今Dに入っているのかBなのかNなのかが分かりやすいが、「電子制御シフト」では常に同じ位置にシフトレバーがあるから分かりにくい。
慣れれば問題ないという意見もあるが、とっさの時(慌てた時)は適切な操作を誤ることがある。特に高齢者や、比較的最近車を買い替えて「電子制御シフト」の車に乗り出した人は。そこに持ってきてメーカー各社の相次ぐ不正である。
いまや車は機械製品ではなく電気製品になっている。整備もすべてコンピューター頼りだ。ところがコンピューターは時に暴走する。いわんや上記で見たように多くの項目で不適切な試験が行われている。
機械は複雑になればなる程ちょっとした操作ミス、わずかな組み合わせミスで狂うことはよく知られている。
PCでさえ複数の動作を矢継ぎ早に行えばフリーズする。車の場合、慌てて次の操作を行っても(アクセルとブレーキを即座に踏み替えても)きちんと判断するのかどうか。
果たして「電子制御シフト」は「踏み間違い事故」と無関係なのかどうか。そうしたことを判断するためにも「踏み間違い事故」を起こした車種まで明らかにして欲しいと考えるのは私だけだろうか。
(5)に続く
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