崩壊するニッポン(3)
技術革新はメーカーに何をもたらしたのか(4)

ニコンの悩み


ニコンの悩み

 世界市場で未だに圧倒的な強さを誇っている日本製品(メード・イン・ジャパンではない)は一眼レフカメラである。単独ブランド力ではライカの後塵を拝するが、一眼レフカメラというカテゴリーでは日本製品のシェアがダントツである。これはデジタルになっても変らない。
 デジタル化があらゆる製品をコモディティー化しているのにもかかわらず、カメラだけはそうなっていないのだ。それはレンズというアナログの部分があるからである。(「栗野的視点(No.429):日本の製造業はなぜ衰退したのか(4)〜強さの秘密はアナログ技術」参照)

 ところがこの世界にも変化が訪れつつある。最初はコンデジ市場の縮小、売り上げ減という形で現れ、普及タイプのコンデジ市場から撤退する日本企業も現れだした。
 この動きはカメラ市場の2強、キャノンとニコンも例外なく襲っている。両社ともにコンデジの売り上げは激減しているが、問題はニコンだ。
 キャノンはカメラ専業ではなく幅広い製品を扱っているのに対し、ニコンは全社売り上げに占めるカメラ関係のシェアが非常に高い。そのためカメラの売り上げに全社の業績が左右される。
 しかも普及タイプのコンデジからプロ用一眼レフまで扱う全方位体制。これがニコンの強みだったが、いまはウイークポイントになりつつある。それは小売業でGMS(総合スーパー)が苦戦しているのとよく似ている。
 国でも商品でも成長段階では総合的に扱う便利なものが求められ、そのカテゴリーが拡大していくが、成熟段階(成熟市場)に移るとなんでも取り扱っている百貨店より商品を絞り込んだ「五十貨店」、専門店が売り上げを伸ばしてくる。人々の好み、興味の対象が分かれてくるからだ。
 そして次の段階ではカテゴリー分けはより細かく、また業際的なカテゴリーが次々に生まれていく。いま先進国はこの、おそらくは最期と思われる段階に入っている。モノも人類も。


 カメラも同じで低価格コンデジから一眼レフまで幅広く扱う段階から次のステップ、特徴あるカメラ、「新しいカメラ」を市場が求めている。にもかかわらず、ニコンはそれに対応する体制へと脱皮できてない。あるいは、いま脱皮しようともがいているが、まだ自社の方向性が明確に見えていないようだ。
 ニコンの脱皮を邪魔しているのは過去のブランド力だろう。特にフィルム時代には圧倒的な強さを誇り、多くのプロカメラマンや報道カメラマンに愛用されてきた。しかし、デジタル時代になるとキャノンと立場が入れ替った感もある(レンズ交換式カメラの販売台数はキャノンの方が多い)が、それでも多くのオールドファンに支えられているのはニコンの強みだ。
 だが、それはニコンの弱みにもなっている。観光地などに行けばよく分かるが、ニコンのカメラをぶら下げているのはオジサン世代が圧倒的に多い。
 この層は時間と金があり、「ホンモノ」にこだわるから、ニコンにとっては「お得意様」である。ただ、この層に頼っている限り未来はない。なんといっても「お得意様」自身に先がないのだから。

 結局、ニコンは低価格コンデジから高級一眼レフまで幅広くカバーするしかなかった。だが、そのこと(低価格コンデジを出したこと)がニコンのブランド力を弱める方向に作用したのは否めない。低価格コンデジは「ニコン」とは別ブランドを立ち上げるべきだったかも分からない、時計メーカーのように。
 そしてコンデジを手にした層は、ニコンの思惑通りには進まなかった。コンデジをカメラ撮影の導入にし、ニコンの主力商品である一眼レフにステップアップしてもらうつもりが、そうはならなかったのだ。彼らはスマホのカメラ機能で十分満足し、逆にデジカメ離れさえ起こしてしまった。
 こうした流れはニコンだけでなく、ほかのメーカーでも同じだが、ブランド力の下落という意味ではニコンの傷が一番大きかったのではないか。

 スマホの影響をモロに受けコンデジの売り上げは大きく下落したが、それでもメーカー、特にニコン、キャノンは高級コンデジ、一眼レフの売り上げは多少鈍化しているものの、今後も成長が見込める市場と強気にとらえていた。
 ところが2013年度後期にはレンズ交換式カメラ(一眼レフ、ミラーレスカメラなど1台のカメラで色々なレンズを付け替えて楽しめるカメラ)の売り上げが前年より約9%減少するなどカメラ市場そのものの縮小が明らかになってきた。そして今期、ニコンもキャノンも一眼レフの売り上げ予測を下方修正せざるを得ず、この状況が来期以降改善されればいいが、そうなる可能性は低そうだ。

概念化の成否が市場を左右
                                             (5)に続く

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