崩壊するニッポン(3)
技術革新はメーカーに何をもたらしたのか(3)

ソニーのジレンマ


ソニーのジレンマ

 スマホ市場の中で唯一売れているのがアップル製品。iPhoneが支持されているのはユーザービリティー(使い勝手)のよさだが、その中にはカメラ性能のよさも含まれる。
 スマホやタブレットのカメラ性能がアップしたため、人々は日常撮りはカメラではなくスマホで行うようになっている。その影響をモロに被ったのがコンパクトデジカメ(以下コンデジ)だ。5インチ程度の小さな画面で見るならスマホやタブレットの内蔵カメラで写した画像でも十分きれいに見えるが、等倍かそれに近い拡大表示画像で見れば写真のブレやアラが目に付く。以前、友人がタブレットで写した写真を送ってくれたがPC画面で見るとブレブレで全く見られなかった経験がある。
 高性能コンデジや一眼レフで写した写真とスマホやタブレットで写した写真にはそれぐらいの違いがあるのだが、スマホやタブレット画面でしか見ない人はその差を実感することがない。差が実感できなければコンデジでなくてスマホでいいということになる。スマホならいつも持ち出しているから、わざわざコンデジを持ち歩く必要もない。かくしてコンデジが持ち出されることも、買われることもなくなり、カメラはスマホに取って代わられコンデジ市場は急激に縮小している。

 ところでiPhoneの写真性能向上に大きく貢献している企業はどこかご存知だろうか。ソニーである。ソニーはデジタルカメラの心臓部とも言えるイメージセンサーを作っており、キャノンを除く多くの企業にソニー製イメージセンサーを供給している。そしてアップルにも。
 ソニーの技術革新のお陰でイメージセンサーの性能はどんどん向上し、その結果、コンデジは一昔前のデジタル一眼レフと同程度の性能になっている。
 普通に考えればデジタル一眼レフの代わりにコンデジが使えるわけだから、コンデジの売れ行きがアップしてもよさそうだが、結果はよく知られているようにデジタルカメラは二極化どころか、コンデジの一人負けになっている。そして本来コンデジが占めていた地位にスマホが座ったのだ。
 このことはカメラの位置付けが変わったことを意味する。従来のハレの舞台に登場する記念撮影的な特別な存在から日常の記録撮影ツールへと変わり、カメラのカテゴリーも大きく変化した。
 撮影専用機だけでなく撮影機能を持ったモノまで広く「カメラ」と捉えられるようになってきたのだ。もちろん従来からのカメラファンやプロはこうしたカテゴリーを認めはしないだろうが、カメラを日常の記録撮影ツールとしか捉えていない人々にとってはカテゴリーなどはどうでもいい話で、常時所持していて、ボタンを押せば写るスマホの方が便利なのは間違いないだろう。

 「スマホにコンデジ市場が食われている」
いま公然とこのことが語られている。そしてその犯人はソニーに他ならない。それでもコンデジ市場でソニーの一人勝ちならまだ納得行くだろうが、当のソニー自身もコンデジの売り上げが縮小しているのだから心中穏やかではないだろう。
 ソニーのジレンマはもう一つある。アップル依存率のアップだ。2013年度には約30%程度だったアップル向け出荷が2014年度には50%超とアップル依存度が高まっている。これはアップルのお陰で稼いでいるとも言えるが、アップルのスマホ、タブレットの売り上げが減少したり、同社からの注文が減少すれば経営に影響を及ぼしかねないリスクも高まっているということだ。
 アップルに限らずスマホ市場全体で見ても、ソニーのイメージセンサーは世界市場で44%のシェア(2013年度)を確保している。今後さらに70%にまで高めたいと同社では考えているようだが、すでに見たようにタブレット市場はいま「クラッシュ」しており、今後買い替え需要が起こるか、それともいままで現れては消えた多くの情報家電と同じ道を辿るのかがまだ見通せない。
 またスマホも先進国では成熟製品になり、成長率が鈍っている。頼みは新興国需要だが、その市場で高性能センサー需要がソニーの希望通りあるだろうか。
 果たしてソニーの経営判断はプラスだったのか、それともマイナスなのか。最悪の場合、自らの技術で自らの首を締めることになるが、そうならないことを祈るしかない。

ニコンの悩み
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