2025年、2030年の社会は?〜世界は独裁化していく(6)
〜歴史は改竄され、作られる「真実」


残酷極まりない「鳥取の飢え殺し」

 独裁化に話を戻そう。怖いのは「ハードな独裁」より「ソフトな独裁」だと述べたが、なぜハードよりソフトの方が怖いのか。
 ここで過去の歴史を少し振り返ってみよう。戦国時代によく比べられる3人の武将がいる。織田信長と豊臣秀吉に徳川家康で、庶民の人気が高いのは豊臣秀吉だろう。
 では、残虐さでは信長と秀吉、どちらが上だろうか。多くの人は信長を挙げるかもしれない。彼は延暦寺の焼き討ちや一向宗との戦いで僧侶であれ、焼き討ち、皆殺しにしているから残虐者のイメージが強く、統治方法も「ハード独裁」だ。
 一方の秀吉は圧倒的な兵力で敵方城を囲み、相手が降伏してくるのを待つ水攻め、兵糧攻めを得意とした。これを「戦わずして勝つ」孫子の兵法と見る向きもあるだろうし、味方の損傷を最小限にする優れた戦法とも言える。

 このことから秀吉の方がソフトな攻め方と見られるかもしれないが、果たしてそうか。
 秀吉は高松城(岡山県)の水攻め、鳥取城の兵糧攻めにしてもそうだが、実に残酷だ。たしかに鉄砲や弓などの武器で惨殺してはいないかもしれないが、兵糧攻めによる死者の数は圧倒的に多い。
 なかでも目を覆いたくなるのは吉川経家が籠もる鳥取城の兵糧攻めで、これは後に「鳥取の飢え(かつえ)殺し」と呼ばれたように、飢えに苦しませ、籠城した者達は草木はもちろん藁まで食べ、最後には死者や深手を負った負傷者の人肉まで競って食べたという記録が残っている。
 日本軍は南方戦線では追い詰められ、飢え、最後には人肉まで食べたと噂されているが、当の本人達を含め口を塞ぎ、公式には認めていない。日本史上で唯一、記録に残ったのが鳥取の「飢え殺し」というわけである。

 それにしてもなぜ、そこまで飢えなければならなかったのか。それは秀吉、というより、黒田官兵衛の進言によるところが大きい。
 本来、戦は武士が行うものであり、武士の戦いである。詳細に触れていると別稿を立てなければならなくなるので簡単に触れると、欧州と日本の城壁の作り方に表れている。
 欧州が町(シティ)を城壁で囲っているのに対し、日本は城壁の中に住んでいるのは武士団で、町民、農民は城壁の外に住まわせていた。

 これを非戦闘員を守らない身勝手と捉えるか、非戦闘員を巻き込まないやり方と捉えるかは意見の分かれるところだが、戦国時代には戦いに非戦闘員、特に農民を巻き込まないというのが「ルール」というか知恵だった。
 というのも農民は生産者(納税者)であり、その農民を殺せば領主は税を受け取ることができなくなる。自らの収入がなくなるわけで、後に家康が言ったとされる「農民は生かさず殺さず」が彼ら武士団の「知恵」だったのだ。
 ところが秀吉は鳥取城の兵糧攻めを短期で終わらせるため、あえて周辺の非戦闘員を攻め立て、鳥取城内に逃げ込ませるように仕向けた。その結果、城内に閉じ込められた者達は言語を絶する飢餓状態に陥ったわけだ。
 さしづめ現代なら無差別殺人、ジェノサイドであり、非戦闘員への攻撃を禁止した「戦時国際法」違反に問われるだろう。

歴史は改竄され、作られる「真実」

 さて、現代である。一部に「ハード独裁」国・地域や「ハード独裁化」へ進みそうな国・地域があるものの、さすがに民主主義国家では「ハード独裁」はない。代わりに進んでいいるのが「ソフト独裁化」である。
 今後、ハード、ソフト独裁、どちらが力を得て行くのか予断を許さないが、もし「ハード独裁」が力を得るようなら第3次世界大戦、核戦争の危険性はかなり高まるだろう。
 その結果はハリウッド映画ならずとも分かる。文明の崩壊、人類の絶滅である。この星の長い歴史の中では過去数度、生物が絶滅した時期があるようだから、このシナリオは映画の上だけではなく、極めて現実的である。

 ところでソフトな独裁化はどのように進むのか、進んでいるのか。
 まず行われるのは歴史の書き換え、改竄である。例えばスターリンのソ連では彼の政敵はことごとく歴史から消し去れたし、毛沢東の中国では林彪や劉少奇は毛沢東と並んで映っている写真から、彼らの姿だけが消し去られていた。
 ありとあらゆる写真から姿を消されるということは存在そのものを抹殺されるのと同じことである。
 それでもまだ同時代の人達の記憶の中には残っているかもしれないが、20年もすれば人々の記憶は朧気になり、残された文字を真実と信じるようになる。その頃には世代代わりも行われているから、改竄された歴史を繰り返し流され、目にして育った世代は、それを「真実」と思い込むことだろう。

 写真から人物を消し去ることは当時の政権にとっては公文書からの抹殺を意味していた。まさにJ・オーウェルが「1984年」で示したように、公文書だけでなく、ありとあらゆる文書、その中には新聞記事も含まれる、を日々チェックし、書き換える(改竄する)「真理省記録局」が存在し、まるで監視カメラで見るように文書をチェックし、不都合なものは廃棄したり書き換えている。

 こうした未来は今、世界各国で現実のものになっている。中国や北朝鮮といった国だけではなく、日本でも、安倍政権下で露骨に行われていることに人々はもっと危機感を持つべきだろう。
  (5)に戻る                     (7)に続く

      性病・エイズ・がん検査を自宅で早く安く確実に!


(著作権法に基づき、一切の無断引用・転載を禁止します)

トップページに戻る 栗野的視点INDEXに戻る





NEC「得選街」