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2025年、2030年の社会は?〜世界は独裁化していく(4)
〜独裁者は味方の顔をして現れる


独裁者は味方の顔をして現れる

 ところで、独裁者と聞いて何をイメージするだろうか。権力の独り占め、反対者や対立者の暗殺・抹殺、情報の一方的な操作、不都合な情報の隠蔽・廃棄、国民の監視、個人崇拝、貧困層の代弁者の顔、権力の座に居座り続ける等々。
 これらから思い浮かぶのは北朝鮮の3代続く金王朝にソ連のスターリン、ユーゴスラビアのチトー、カンボジアのポルポト、中国の毛沢東、習近平、ドイツのヒトラー、イタリアのムッソリーニ、そして日本の軍部指導者・・・。
 多くを共産圏の指導者が占めているが、彼らに共通しているのは強権的な独裁者の顔で登場してきたわけではないということだ。むしろ虐げられていた民衆の代弁者として登場し、彼らの圧倒的な支持を得ていたのだ。ヒトラーでさえそうだった。
 彼らは既存政党、前政権を批判する改革・革命家であり、下流・下層の虐げられた人々を貧困から解放する指導者(と思われた)であり、問題を「あれかこれか」と二元化して提示して見せたため分かりやすく、民衆のエネルギーを1つの方向に導いて行った。

 それまでのリーダーは知識層から出ているから、どうしても論理的思考になる。早い話トランプ米大統領のように「君達が貧しいのは移民が仕事を奪っているから。移民を排斥しろ」とは言えない。そんな単純な構造ではないと分かっているからだ。ところが仕事が減り倒産の危機や首切りに直面し、なぜこんなことになったのだ、何が悪いのだ、とモヤモヤした感情を抱えている人達の前に明確な道を示す人間が現れればどうなる。
 腐敗した政治家を追放しよう。
 移民が君達の仕事を奪っている。
 今までの自民党をぶっ壊す。
 3本の矢で経済をよくする。

 かつて「言語明瞭、意味不明」と揶揄された首相がいたが、今の政治家にこそ当てはまる言葉ではないか。いずれもスローガンの類だが、「敵」が明らかになると攻撃しやすくなる。
 そのスローガンを唱えていればストレスの発散になり、問題が解決されるかのような気になる。皆で叫べば一体感も生まれる。第一、自分の頭で考えなくていいから、ある意味ではスッキリする。
 オカルト集団の洗脳もヘイトスピーチを叫びながらのデモも、古くは毛語録を掲げた紅衛兵の行進も同じようなものだが、最近の政治家はスローガン的な1フレーズ、1イッシュー(論点)を掲げる者が多い。その方が分かりやすく、人々が抱えている不満を1つの方向に持って行きやすいからだ。
 その典型が小泉純一郎元首相だったり、トランプ米大統領であり、安倍首相もそれに倣っている。                                 (5)に続く


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