映画は未来を映す鏡
未来を映す1つの鏡が中国なら、もう1つの鏡はハリウッド映画である。ハリウッド映画は常に未来を先取りしてきた。「未知との遭遇」(1978年日本公開)「E.T」(1982年公開)など80年前後のハリウッド映画は未来への希望を描いていた。だが最近のハリウッド映画が描く未来は核戦争で荒廃した地球で繰り広げられる暴力やエイリアンとの戦い、宇宙戦争といった希望がないものばかりだ。
20年後、50年後でも人類はまだ戦争や戦いに明け暮れ、暴力が支配し、戦いがない平和な社会を実現していないようだ。進歩したのは技術だけで、人類は進歩どころか退歩しているようだ。
なぜ、彼らは未来をそう想像するのか。それは現在に絶望し、明るい未来の種も芽も見られないからだろう。
むしろ可能性があるのは北朝鮮の若き独裁者がミサイルをアメリカに向けて発射したり、トランプ米大統領が金正恩やイラン指導者の暗殺指令を出し、それをきっかけに核戦争が起きることを危惧しているからだ。
こうした見方が当たらないことを望むが、往々にして映画が描く未来の世界は当たっていることが多いだけに不気味だ。すでに50年近く前にJ・オーウェルが「1984年」で描いた「テレスクリーン」で監視される近未来社会は現実になっているし、スノーデン氏が警告しているようにインターネット監視社会はさらに強化されている。顔認証システムはすでに実用化され、中国では街のあちこちに取り付けられた監視カメラで個人の行動がすべて監視されている。
5年後には世界が中国のようになっているだろう。セキュリティーと称して各国は顔認証システムを張り巡らせ、いつ、どこで、何をしたか、食べ物の好みや趣味はもちろんのこと、異性の好み、さらには性癖までがすべて掴まれている。
いや、実際にはすでにそれらの一部は実行に移されているのだが、表に出ているのはネットショップでの買い物傾向ぐらいだから多くの人は自分には関係ないと安心している。
しかし、現実は人々が考えている以上に進んでおり、マスデータという名の下に個人情報はどんどん集められ、利用されている。
5年後にはスノーデン氏の警告通りの世界を私達は見ているだろう。「エネミー・オブ・アメリカ」が公開されたのは20年も前のことだが、いまではよほどのお人好しでもない限り、あの映画で提示された世界がすでに現実のものになっていることを疑う人はいないだろう。 (4)に続く
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