N の 憂 鬱-22
〜バリ封鎖と逆封鎖、法文本館の激しい攻防戦(4)


 10・21が終わり11月に入ると両勢力の衝突は激しさを増しだした。民青は口では「暴力反対」を唱えながら体育会系右翼の力を借り、全共闘系デモに殴りかかるまでになった。さすがに角材を持っての殴り合いまでには発展しなかったが、他大学では民青も角材等で武装し、全共闘とやり合っていたからE大でもそうなる可能性は強まっていた。

 11月4日、全共闘・愛誠会は大学当局に対する抗議集会を開き、学内デモを敢行した後、校門前の民青の立て看を角材等で破壊。それを見た民青系はマイクでがなり、批判する。それに対し愛誠会・全共闘も負けてなるものかとマイクで応戦し、両者の間で激しいののしり合いが展開された。
 翌5日、民青系民主化行動委員会は午後1時過ぎから記念講堂で「学生大会実現実行委員会結成大会」を開催。「無期限ストは問題の解決にはならない」と主張し、無期限スト解除に向けた動きを始めることを決めた。具体的には学生大会の招集を求める署名活動の開始である。
 愛誠会執行部を反民青系に握られた彼らは学生大会を開催することが出来ないから「学生大会招集を求める署名活動」から開始せざるを得ないのだった。

「民青の会場に乗り込み、論争しようじゃないか」
「よーし、記念講堂までスクラムデモで行くぞ。そのままなだれ込み我々が会場を占拠するんだ」
 愛誠会・全共闘はその場で急遽、民青主導の大会会場に乗り込むことを決め、スクラムを組んで押しかけた。
 その気配を察した民青・体育会系の学生60人近くが記念講堂入り口で互いに腕を絡ませるピケを張った。そこへ全共闘30-40人がヘルメット被りスクラムデモのまま突入していく。ピケを張って待ち構えた民青系とのあいだで押し合いになる。

 最前列中央部にいたNはヘルメットに衝撃を受け、中腰の姿勢を保ったまま下から見上げた。するとそこに地方研で見たことがある民青の下級生部員の顔があった。
「くそっ、こいつが殴りやがったのか」と上目遣いに睨みつけた。するとまたヘルメットに先程より強い衝撃を感じた。
「この野郎!」とスクラム姿勢のまま突っ込もうとしたが、スクラムを組んでいるから動きが自由にならない。足を上げ蹴ろうとしたが、中腰に近い姿勢のままでは足が上がらず相手に届かなかった。
 相手側も一人ひとりがバラバラにならないように互いの腕を絡ませているから動きはそう自由にはならないが立っている分だけ有利で、時折絡ませている腕を外して殴り降ろしたり、足で蹴ってきたりする。
 ぶつかり合いは数度続いたが、数では民青系の方が勝っていた上に体育会系の男達がピケの最前列を張り、殴りかかりスクラムデモから剥がそうとするので突入を諦め、占拠中の法文学部本館に退却した。

 入れ替わるように法文本館にいた仲間20数人が法文本館前の棟、図書館屋上に陣取りマイクで封鎖反対等をがなり立てている3人を見つけて屋上に駆け上がって行った。マイクを奪われまいとする3人と揉み合いになったが3人対20数人、ここでは民青系に勝ち目はなく、マイクを奪われて叩き付けて壊され這う這うの体(ほうほうのてい)で退散した。
 それを見た民青系がすぐさま応援に駆け付け、ここでも揉み合いになったが、勢いがある民青系に今度は全共闘系の方が追い払われてしまった。
            (5)に続く

#全共闘運動 #民青との対立激化
 


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