N の 憂 鬱-22
バリ封鎖と逆封鎖、法文本館の激しい攻防戦(3)
ー民青との対立が激化ー



▽民青との対立が激化

 9月の新学期を迎え、学生の意識に変化が見られた。人の集中力や緊張はそう長くは続かない。緊張が長く続けば続くほど、どこかで息抜きをしたくなるし、緊張感が緩んだ時ホッとする。
 怠惰な日常から抜け出して緊張に包まれた非日常に身を置いた時、それまで経験したことがない緊張感にある種の喜びにも似た感情に包まれ高揚する。
 しかし、その状態が非日常ではなく日常になると、今度は怠惰な生活に思えた日常が懐かしくなる。あの頃は怠惰な生活だと感じていたが、今日は昨日の延長で、明日は今日と変わらない変化のない日常が妙に懐かしく、安心を覚えるのだ。人間とはなんとも厄介な存在である。

 9月の新学期の始まりとともに活動の周辺部にいた学生達の間にデモやスト疲れの空気が広がり出していた。大学立法が反対運動もむなしく成立したことも影響しているが、緊張感は運動の周辺部ほど薄まるし、長続きしないのはあらゆるものに当てはまる。
 そういう流れに乗って勢いを付けてきたのが民青だ。彼らは事あるごとに全共闘と対立してきたが、それまで彼らが牛耳ってきた法文学部の自治会組織・愛誠会の執行部選挙で敗れ、執行部が反民青系で占められたため、表立って活動する組織を彼らはなくしていた。
 「日共=民青」を表面化させて活動すればいいようなものだが、彼らは常に日共との関係を隠し「一般学生」の代表という形を取り行動していた。
 だが、全共闘と対立する上で「一般学生」では活動しにくいと考えたのだろう「民主化行動委員会」という組織を名乗り、全共闘の組織を真似て各クラス、サークルに民主化行動委員会なるものを創ろうと、大学民主化政策討論集会を開催した。

 彼らが言う「民主化」とは何なのか、概念も曖昧でよく分からないが、曖昧な方が都合いいことは多い。相手が勝手に解釈してくれるからで、概念の曖昧さを敢えて曖昧なままに止め、明確にしないのが日共=民青が取り続けている手法でもある。

 10月11日午後1時、民主化行動委員会を名乗る彼ら民青は大学民主化政策討論集会を開催。集まったのは「暴力反対」を唱える女子学生、といっても大半は民青系女学生と、その勧誘に応じた者達だが、それと社会的な問題より個人的な問題、例えば早く授業を再開して単位を取得し、就職に影響が出ないようにしたいといったようなことを優先したいと考える学生達でその数約200人。
 その集会で以下のような点が確認された。
1.大学立法無効・非協力宣言を行うこと
2.同法による「紛争報告」をしないことを確約すること
3.学生の交渉権、スト権、政治活動の自由を認めること
4.学生を大学自治の主体として認め、大学運営に参加させること
5.原則として学内問題の処理の手段として警察力を導入しないこと

 これらはすでに法文学部自治会・愛誠会、全共闘が主張してきたことと似ているが、全体的に大学当局へのお願い調になっていることからも分かるように、民青は大学立法粉砕ではなく「非協力宣言」をするよう大学当局に促しているだけであり、彼らの真の目的は大学当局と一体となって全共闘を排除し、自治会愛誠会執行部を取り戻すことである。

 全共闘・愛誠会は民主化行動委員会の欺瞞性を訴え、集会に参加しないようマイクで訴えたが、それでも200人前後がその集会に参加したことを見ると、学生の中にデモ・スト疲れが広がりつつあることが読める。
 翌日、全共闘・愛誠会は約400人を集め、大衆団交を要求して集会を開催。集会後約100人が学内デモを行った後、40人程がそのまま学生部長室に突入し、占拠。

 学内外デモやスト、占拠が日常化していく中、民青系は賛同者の人数を増やしていき、全共闘系による民青系の集会妨害デモに対しピケを張り阻止するようになっていた。
                            (4)に続く

#全共闘運動 #民青との対立激化


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