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主観年齢が若いと見かけも若くなる。(2)
〜心の時計の針を巻き戻す


主観年齢が若い人は見かけも若い

 まだ、頭は錆び付いてないかもと少し気をよくしたところで気分転換。そんな時、精神科医の和田秀樹氏が書いた「若く見える人と老け込む人の違い」という記事が目に付いた。

 昔、社会人になりたての頃、社長から「若さと若々しさは違う」と教え込まれたが、記事の内容は掻い摘めば似たような話で「主観年齢」と「実年齢」は違うということ。
 主観年齢とは自分が感じている年齢のことで、この年齢が若ければ若いほど健康度がアップし、老いていくスピードが緩やかになるということがフランスのモンペリエ大学のヤニック・ステファン博士の追跡調査で分かったと書かれていた。

 この調査を受けてのことなのかどうか不明だが20年程前、日本生命生活研究所が行った調査結果を思い出した。
 同所が30代〜60代の男性を対象に行った調査で対象者に「自分が感じている年齢」と実年齢の差を尋ねると実年齢より4歳〜14歳若く感じているという結果が出ていた。
 つまり主観年齢の方が実年齢より若く捉えているわけで、その頃身近な友達に自分は何歳だと思っているかと尋ねてみると、50代後半の相手は7〜8歳若く、70歳前の相手は16歳と答えた。
 共にパートナーが若かったということはあるが、特に70歳前の彼はとても70歳目前とは思えなかったし、両者ともいろんなことに興味、関心を持っていた。

 その逆に主観年齢を上に言った人もいる。長年会ってなかったので、たまたまそちら方面に行くついでに少し遠回りになるが足を延ばし、再会したいと思い連絡。「お変わりありませんか」と尋ねると「もう80歳だから」と言われ驚いた。80歳にはまだ2年もあるはずなのに。
 「もう」と「まだ」では言う方も聞く方も受け取る印象がまるで違う。「まだ78歳だ」と言われれば、会いに行くのが楽しみになるが、「もう80歳だから」と2歳も上を言われれば話をしても面白くないかも、とこちらの気持ちが萎えた。

心の時計の針を巻き戻す

 ハーバード大心理学のエレン・ランガー教授が1979年に行った興味深い実験がある。
 70代後半から80代初めまでの男性たちを募集し、心の時計を20年前に戻した場合、身体にどのような変化があるかを調べた。
 ある修道院を20年前と同じ環境にし、被験者に20年前に戻った気分で1週間過ごしてもらうというもの。被験者は20年前の映画を鑑賞し、20年前に流行った歌を聴き、当時の時事問題について討論しただけでなく、食事のメニューや調理、皿洗いなど身の回りのことを自分でするように決めた。

 その結果、被験者全員が若返ったのだ。視力や聴力、記憶力も向上し、それまで誰かの支えなしでは歩くのも難しかった老人が杖なしで歩けるようになり、ある老人はフットボールの試合にまで参加できるようになったというから驚く。
 この実験は「心の時計の針を巻き戻す実験」と呼ばれ、世界中の心理学者と行動経済学者から絶賛されたという。
 「私たちの限界を決めているのは肉体そのものではなく、むしろ頭の中身の方だ」(エレン・ランガー教授)

 この記事を読んだ時、納得もし反省もした。反省は今年に入ってから、今まで口にしたこともない「歳だから」「高齢者だから」という言葉をことさら強調しだしたことだ。
 「最近、歳だと開き直っている」とパートナーからたしなめられるが、最初は冗談交じりに言っていたが、一度口に出すと自分で本当にそうだと思い始めるから不思議だ。
 運動しないのも歳だから、外出しないのも高齢者だから、という言い訳を作り、今度はその言葉で運動や外出をしなくなる。自分の行動や見てくれを逆縛りしてくるのだ。
 その結果、筋肉と頭は衰えていく。外出もしなくなれば身なりにも気を使わなくなるから年齢以上に老けて見える。

 幸い私の場合、2拠点生活をしていることが老け込まない一因になっているのではと考えている。高速道路を一人で7時間も運転して福岡から兵庫県境まで移動し、田舎生活では身の回りのことは自分でしなければならないし、滞在中はカメラを持って季節の花や各地の祭り、景色を撮りに出かけている。外出すれば人との触れ合い、会話もあり、そこでまた新たなことへの興味が湧く。

 なるほど主観年齢が若いほど健康度がアップし、若く見えるのかと納得し、歳だから、高齢者だからとは冗談にでも言わないようにしようと思い直した。
                           (3)に続く


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