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地球温暖化防止こそが焦眉の問題(3)
〜レジ袋の廃止で森林伐採が増える


レジ袋の廃止で森林伐採が増える

 総論賛成、各論反対ということはよくある。特に政治の世界では。環境問題も似たようなところがあり、こちら側から見れば善だが、あちら側から見れば逆に環境破壊に繋がるという矛盾が起こり得る。
 例えば7月1日からレジ袋の無料配布廃止が全国で一斉に始まった。プラスチック製品の削減と、海洋生物に与える影響防止のためである。特に後者は近年、問題化されており、海洋生物の体内に蓄積されたマイクロプラスチックは、魚類を食べる人間の体内にも蓄積されていくため人類の生存とも関係してくる。
 こうしたこともありレジ袋の代わりに「マイバック」を持参する消費者が増えている。私自身も買い物に行く時はマイバックを持参しているが、店によってはユニクロのように紙袋に替えたところもある。
 こうした動きは世界的に広まっており、プラスチック製のストローを紙製のものやほかのものに替えたり、ストローを廃止したところもある。

 これらは悪いことではない。しかし、ブーム的な既視感を覚える。10数年前にマイ箸が流行り、飲食店は割り箸を塗り箸に替え、繰り返し使用するようにしたが、いつの間にやら割り箸が復活し、今でも塗り箸を使っている店は少数派になっている。これにCOVID-19が追い打ちをかけ、塗り箸を使う店はほぼゼロになるだろう。

 もう一つはユニクロのようにレジ袋やビニール袋を紙袋に替える動きだ。たしかに動物や海洋生物の胃袋をプラスチック製物質から守ることには役立つだろうが、紙製品の使用が増えれば森林伐採はさらに拡大する。
 国内の間伐材を使用すると主張するかもしれないが、量と価格の両面から考えれば、それはないだろう。

 リサイクルにも同じようなことが言える。リサイクル、リユース等を進め循環型社会を目指すという謳い文句の下、各自治体では積極的にリサイクルに取り組んでいるが、その実態はクエスチョンマーク付きだ。
 非常に細かく分類して収集する自治体がある一方、福岡市などのようにリサイクル回収するのはペットボトルとビンだけで、後は燃えるゴミ、燃えないゴミに分け、焼却か埋め立て処分というところもある。

 ここだけを見れば細かい分類をしている自治体の方がリサイクルに熱心なように思えるが、もう少し先の出口まで見なければ、一概にどちらがどうとは言えない。 というのはリサイクル品として回収されたものの大半は海外の新興国へ輸出されているからである。輸出と言えば聞こえがいいが、実際はゴミの新興国への押し付けだからだ。
 以前は中国が主要な「リサイクル資源」の輸出国だったが、近年は輸入禁止措置が取られている。中国に代わるアジアの他の諸国も経済力をつけてくるに従い、「ゴミの輸出」拒否の姿勢を鮮明にし出したので、国内の回収リサイクルゴミは行き場を失い、回収業者の敷地に山積みになったまま放置されている。そこに今回のCOVID-19が追い打ちをかけ、ますますリサイクルゴミは行き場を失っている。

 リサイクルとは循環であり、それを広範囲な地域、地球規模で捉えてリサイクルと言うのは詭弁以外の何物でもないだろう。本来、自国内で処理すべきで、そういう意味ではCO2の排出取引というのもおかしな方法だが、何もしないよりはした方がいいということか。                                     (4)に続く

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