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 武漢の「成功」に倣えは正しいか(2)
〜倣わなかったスウェーデン、台湾例


倣わなかったスウェーデン、台湾例

 そこで浮上するのが都市封鎖以外の方法を取っている国の存在である。そうした国や地域が存在しないのなら「武漢に倣う」べきだが、そうでなければ別の方法も検討すべきだし、取り入れるべきだろう。

 怖いのは異論、異見を言わせない、都市封鎖以外の方法を取らせない雰囲気が世界中に蔓延していることで、世界が1色に染まっているような感があることだ。

 世界各国が都市封鎖に舵を大きく切る中で唯一の例外ともいえるのがスェーデンの対応だろう。北欧諸国の中でも異色で、隣国が国境閉鎖等の封鎖措置を講じる中でスェーデンだけは都市封鎖はもちろん、国境封鎖も外出禁止令も出していない。
 さすがに外出自粛の呼び掛けは行われているようだが、呼び掛けに応じない商店や人に罰金を科すようなことは行っていず、国民の自主性に任せている。

 そんなことをしているなら感染者数、死者数も多いに違いないと思われそうだが、スェーデンの感染者数は13,216人、死者数1,400人(4月18日現在)で、イギリス108,692人、14,576人、ドイツ140,886人、4,326人と比べても少ない。因みに日本は10,432人、224人(同)で感染者数はスェーデンに近いが、死者数は圧倒的に少ない。
 もちろん今後スェーデンで爆発的増加が起きないという保証はないが、EU諸国のような都市封鎖も外出禁止令も出さずにこの数字なのだから、都市封鎖が感染拡大を防ぐ唯一の方法とは少なくとも言えないだろう。

 もう一つの例は台湾で、学校の休校処置は取らず通常通りに授業を行っている(この点はスェーデンも同じ)。ただし学級で感染者が1人出ると、その学級は閉鎖。学校で2人以上の感染者が出れば休校にすると決めている。台湾の感染者数は395人で死者数に至ってはわずか6人(同)という世界でも類を見ない少なさだ。

 世界は強権的な中国の方法ではなく、台湾の方法になぜ倣わなかったのか。それにはWHOの態度が大きく影響している。台湾はWHO非加盟なのだ。加盟に反対しているのは中国であり、WHOの年次総会にオブザーバーとしての参加も認められていない。
 そのため昨年末段階でいち早く中国・武漢で特殊な肺炎が発生していると伝えたが、その情報がWHO加盟国内で広く伝えられることはなかったし、その後の対応方法も共有されることがなく、中国政府の対応のみが世界に知られて行った。
 もし、台湾が取った方法が広く知られていれば、世界各国のやり方は現在と違う方法を取っていたかもしれない。

 ともあれ現段階では新型コロナウイルスと、そのウイルスによって引き起こされる感染症(COVID-19)についてはまだ不明な点が多いし、現段階で世界各国は対処療法に追われ、原因究明やウイルスの正体把握、ワクチンの開発には至ってない。
 また都市封鎖が本当に有効なのか、それともスウェーデン方式の方がリスクが少ないのかを判断するにも、もう少し長い時間が必要だし、COVID-19に関するデータが少ない(正確には対応に追われデータを分析する人員と時間が足りていない)。

 中国は強権的な方法で都市を封鎖しただけでなく、COVID-19に関する情報までも封鎖し、外部に対しては都合のいい情報しか(例えば感染者数、死者数を今頃になって倍に訂正したが、果たしてそれも実数に近いかどうか)出してこなかっただけに世界各国は中国による誤ったメッセージを受け取っていたかもしれないという懸念がある。
 ただ1つだけ言えるのは「コロナ以前」と「コロナ以後」の世界は激変しているということだが、それは次回に回したい。

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