中華圏旅行は毎回エキサイティング(2)
〜台北でメガネを、上海では妻の遺骨を置き忘れ


台北のホテルでメガネを紛失

 さて最終日は早朝の便での帰国。荷物をまとめ、最後に部屋の中を見回し忘れ物がないかをチェックして空港へ。何事もなく帰国したはずだったが、帰宅して荷物を開けてメガネがないことに気づいた。
 途中で使ってないからホテルの部屋に忘れたとしか考えられなかった。だが、最後に部屋をチェックした時にも見当たらなかったのになぜ、と考えてハタと思い当たった。
 目覚めた時、サイドテーブルの上に置いていたスマートフォンがベッドとサイドテーブルの間に落ちていたのだ。メガネも一緒に置いていたから、きっとメガネもベッドとサイドテーブルの間に落ちていたに違いない。

 さっそく旅行会社に電話し、上記の状況を話しホテル側に問い合わせをしてもらった。その日のうちにメガネの忘れ物があったと連絡が入り、郵送料の振り込みを確認すれば国際郵便で送ってもらう手筈を取ると言われたが、問題は送料。2万円もかかるなら新しく作り直した方がいいだろうと考えながら尋ねると3,500円とのことだった。

 ところが振込先を知らせる通知が届いて封を開けてビックリ。そこには35,000円と書かれていた。えっ、3,500円は聞き間違いだったのかとガッカリ。ただ、メモ紙を見ると、3,500円との走り書き。まさか1桁聞き間違えたのか。いよいよ認知症かとさらに落ち込んだ。それでもと思い、電話で問い合わせると担当者は不在だったが、先方のメモ書きにも3,500円と書かれていたらしく書類を送り直すとのこと。そんなこんながあったが、1週間以内に台北から無事メガネが届いて1件落着。

上海では妻の遺骨を網棚に忘れた

 忘れ物といえばなぜか中華圏でする。国内では傘ですら忘れたことがないというのにだ。
 10数年前、上海に行った時のこと。フリープランで行き、1週間余り滞在したが、忘れ物をしたのは上海に着いた初日の出来事。浦東空港から世界最速(当時)という触れ込みのリニアモーターカーに乗って龍陽路駅まで7分20秒の旅を楽しみながら、電光掲示板に映し出される速度数字をビデオカメラで撮っていた。瞬間とはいえ世界最速(当時)の時速430kmを撮り終えて下車。そこから地下鉄2号線に乗り換えて、ホテルがある人民広場駅に降りた時、背中にリュックを背負ってないことに気付いた。ビデオ撮影をする時リュックを網棚の上に置き、そのまま忘れて降りてしまったのだ。地下鉄駅からホテルはそう遠くない距離とはいえ心は重かった。おまけに雨まで降っていて、この時だけは泣きたい気持ちだった。

 問題はリュックの中身だ。ノートパソコンにデジカメも入っていたが、なにより問題だったのは亡き妻の遺骨を小さな入れ物に入れて一緒に連れてきていた。妻の遺骨を外国に置き去りにすることはできない。
 ホテルについて事情を説明するが「一応連絡はしてみますが、忘れ物は出てこないと思った方がいい」との従業員の言葉。外国で忘れ物をした時どこに届ければいいのか、どうすればいいのか全く分からず、ただ狼狽えるばかりだったが、その時の連れが英語、中国語を話せる人で「とにかくリニアモーターカーの駅まで行こう」と行ってくれた。
 時間はすでに午後8時近かったので駅舎への出入り口は閉鎖されていた。それでもどこか開いてないかと裏口を探して周囲をウロウロし、人を見つけては尋ね、すっかり疲れ果て、諦めて帰ろうとした時、扉の向こうから人がやって来た。JTBの中国人現地社員だったが、彼が親切にも何軒かに電話をしてくれ、私達が乗ったリニアモーターカーはすでに車庫に入っているようだから今夜はもう無理。だが、明朝電話して探してあげるから明日電話してくれと言われた。
 結論から言うと奇跡的にリュックが見つかった。もちろん中の物も何1つ無くならずに。それを知った中国人は一様に驚いていた。帰国後、その話を聞いた皆の反応は1つ。「奥さんがこんなところに置き去りは嫌といったのよ」。その通りだと思う。

                                               (3)に続く

人生大逆転するならまずは営業術。  


(著作権法に基づき、一切の無断引用・転載を禁止します)

トップページに戻る 栗野的視点INDEXに戻る


リゲッタ公式サイト