旅先で人情に触れる
京都に行った時、JRの車内で「大名行列」の中吊り広告を見た。岡山県矢掛(やかげ)町で開催されるらしい。京都まで広告を出すのだからよほど盛大に違いない。その頃帰省していたらぜひ見物に行きたいものだと考え、メモ帳を取り出し日時などを書き写していたら危うく次の駅まで乗り過ごしそうになった。
この「大名行列」が気になって時期を1週間早め11月中旬に帰省し、翌13日、矢掛町まで車を走らせた。岡山県を北東の端から南西の端近くまで斜めに南下することになる。所要時間は約2時間弱。
大名行列の開始は12時半。その30分前には現地に着きたかったが、町に到着したのは12時半前。臨時駐車場があちこちに設けられ、係員の誘導に従って第1から2、3、4と臨時駐車場を次から次へと移動。「下〜に、下〜に」という声が拡声器から聞こえてくる。気は焦るが駐車場は一杯で、次の駐車場へ行ってくれとたらい回しにされる。土地勘はないし、途中で「第5」の案内は消えるし、中心部から離れていくし。
目に付いた会社の敷地内に車を入れ、そこに居た人に「済みませ〜ん。大名行列を見に来たんですが駐車場がなくてぐるぐる回っているんです。済みませんが駐めさせてもらえないでしょうか」とお願いしたところ、「ちょっと待ってくださいよ」と言って、会社の人に交渉してくれた。
「いいですよ。そこは店の前だから裏手の方に駐めてください」
厚意に感謝し謝辞を述べ、車を駐めると、「この道をまっすぐ行くと大名行列がありますから」と、最初に声をかけた男性が寄って来て親切に道順まで教えてくれた。後で気付いたが駐車させてもらった場所はJAの敷地だった。
それにしても矢掛町の人は皆、親切だった。2時過ぎ、出店でばら寿司を買い、遅い昼食を採っている時もわざわざお茶を持ってきてくれたり、菜っ葉漬けを「これも食べんさい」と戴き、恐縮した。
そういえば後日、兵庫県宍粟(しそう)市の最上(さいじょう)山もみじ公園に行った時も、帰りに地元の人が出店している出店の呼び込みに釣られ、夕食用に鯛めしを1つ買ったところ「おいしかったら、ぜひ来年来られた時も買ってください」と言われ、「いやー、福岡からだから来年もと言われても」と答えると、「えっ、福岡からですか。それは遠い所からわざわざ来られて。もう1つおまけしときます」と2個戴いた。出店は地元のNPOみたいだったが、最初に呼び込みをした女性が、えっ、いいんですか、というような顔をして、おまけの1個を追加してくれた男性の方を見たから特別だったのだろう。まあ、時間が4時だったということもあるだろうが、それまで300円で売っていたものが200円になり、さらに1個おまけしてもらったわけだから、結局1個100円で買ったことになる。
旅は道連れ世は情け、と言うが、若い頃と変わったのはこちらが厚かましく色々話しかけるようになったからかもしれないが、旅先で親切にされるのはうれしいものだ。
もちろん、いいことばかりではない。どこに行っても目に付くのはマナーの悪さだ。こちらがカメラを構えている前にわざわざ来て写真を撮るマナー知らずは外国人より日本人の方が多い。一体、この国はどうなっているんだ。これでは若者や子供のマナーが悪くなるのは当たり前だと毒づきそうになり、そんな自分を認めて、ああ歳を取ったということかと嘆き、お節介も厚かましさも控えめにと自戒しているこの頃・・・。
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