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「巣籠もり」作戦は本当に正しいのか、事態を打開できるのか。(3)
〜重視すべきは感染者数より死者数


重視すべきは感染者数より死者数

 最初は相手の正体がよく分からず右往左往するが、時間の経過とともに冷静さを取り戻し、客観的に捉え直そうとする動きが出てくる。
 彼らは往々にして疫学や感染の専門家ではなく、別の分野の科学者であることが多い。現場を最も知っている医師は最前線でCOVID-19に向き合い、治療に追われているので、データを収集し分析することに割く時間がない。それでも一部の医師は自らが知り得た情報の中からデータ分析をしようとし、まとまった形ではなく部分的ではあっても情報を発信しているが。

 そのほかの「専門家」の言うことはTVの情報と同程度にしか信用できない。なんといっても彼ら自身が避けるように言っている「三蜜」状態の中で「専門家会議」を開いていたぐらいだから言行不一致の誹りは免れないし、信用を置けないと受け取られても仕方がない。
 本メルマガ「No.682:「COVID-19」報道に接して感ずるいくつかの疑問」の中で<2.「3密」会議の「専門家会議」への疑問>と題して書いたが、同じ疑問を感じた同業もいたようで、同会議に出席した「専門家」達にメールで問い質したが、まともな返事はなく、中には怒り出した「専門家」もいたとのことだ。
 一般人は黙って自分たち専門家の言うことを聞いておけばいい、という態度であり、自分達は専門家で、気を付けているから感染しないと。中にはあの会議は「二密」だったかも分からないが「三蜜」ではないと開き直った者もいたというから、およそ彼らの言うことは信用できない。

 そういえば11日の参院予算委員会で、現在15,000人超とされている国内感染者数は10万人以上いるのではないかと問われ、「専門家会議」の副座長、尾身茂氏は「報告されているより数が多いのは間違いない。それが10倍か20倍か30倍かは誰も分からない」と答えている。
 「専門家」が、報告されている感染者数を信用していないばかりか、どれほどの人が感染しているか「誰も分からない」と言うのだ。トランプ米大統領の言葉ではない。新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の副座長の言葉である。この言葉を耳にした人は皆一様に驚き、呆れたに違いない。
 だが、見方を変えれば彼は正直なのだろう。本人がそこまで意図していたかどうかに関わらず、感染者数なんか当てにはならないし、そんな数はどうでもいいと考えているということである。

 ここで本メルマガNo.683で書いたことを思い出して欲しい。私はそこで感染者数に触れ「検査総数中の感染者数と、実際に感染した人の数の2つがある」と指摘していたことを。
 尾身氏が「感染者数は・・・誰も分からない」と答えたのは、後者の実際に感染した人の数のことである。となると我々はどのデータを重視すべきなのか。

 我々がものを論じる時、基本に据えなければならないのは状況や条件によって変わらない普遍的な数字である。感染者数がそれに合致しないのは、国や地域によってデータの取り方や範囲、検査数が違うからだし、感染しているか否かは検査してみないと分からないことだから、実際の感染者数は尾身氏が言うように「誰も分からない」のだ。

 では、データのどこを見ればいいのか、どのデータを比較すればいいのか。それは死者数である。これこそ絶対的な数字であり、比率で比較できる数字である。
 以下に欧米とアジアの死者数を記す。5月12日段階の数字で、出典はロイターの記事より。
 アメリカ  81,968人
 イギリス  32,692人
 イタリア  30,911人
 スペイン  26,920人
 フランス  26,643人
 ブラジル  12,400人
 ドイツ    7,587人
 中国     4,633人
 スウェーデン 3,313人
 インドネシア 1,007人
 日本      691人
 韓国      258人
 タイ      56人
 台湾       7人
 ベトナム     0人

 この数字を見れば、あることに気付くだろう。そう、死者数が桁違いに多いのはアメリカとEUなのだ。対して東アジア諸国では日本の691人が最多で、その次が韓国の258人。台湾はわずか7人で、ベトナムに至っては死者ゼロである。
 こんなに被害地がはっきり分かれるのは珍しいが、アジア地域は2002年の冬から2003年春にかけてSARSが大流行したが、欧米ではSARSが大流行することもなかったため、コロナウイルスに対する人々の意識が薄く、対応が遅れたからではないかと考えられる。

 もう1つはスウェーデンの死者数である。この数字を多いと見るか、それほどではないと見るかは分かれるところだ。というのは絶対数ではカナダの5,049人より少ないが、同国と国境を接しているノルウェーの228人、デンマークの527人と比較すればはるかに多い。人口を同程度に変更して計算しても。
 だが、同国はロックダウンをせず、国境も閉鎖せず、出来るだけ普段通りの生活を維持する方法を選んでいるわけで、それを考えるとロックダウンの効果に疑問を挟む余地がある。                  (4)に続く


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