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「コロナ」が変えた社会(Z)〜世界はファッシズムに向かう(4)
顕在化する民衆ファッシズム


顕在化する民衆ファッシズム

 この10年近く、世界はソフトファッシズムに向けて緩やかに動いていた。それに拍車をかけたのは習近平の中国と新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)である。
 中国のハードファッシズム化には先進諸国は皆危惧を表明し警戒を強めていたが、目に見えないウイルスの勢力拡大で世界の政治指導者達は中国に倣い、一気に(ソフト)ファッシズムに舵を切った。
 当初、中国の「帝国化」やファッシズム化を批判していた各国の指導者達もこぞって私権の制限に乗り出したが、各国民の間で目立った反対運動は起きなかった。
 伝統的に自由を重んじてきたフランスでさえ、若き大統領の下「ロックダウン」が実行に移されただけでなく、違反者への罰則規定さえ導入され、警官が路上で取り締まりだしたが、それに対する目立った反対行動はなかった。

 西側諸国の「ロックダウン(都市封鎖)」の強行に対し、我が国の対応は国民へ「不要不急の外出自粛」や「営業時間短縮」の「お願い」という緩やかなものであった。
 政府のこの対応に対し批判も起きたが、個人的にはむしろ評価している。ソフトファッシズムに向け突き進んでいた安倍政権がよくも強権的な行動に出なかったものだと。
 自民党の中にはこの機会に憲法改定に突き進もうと目論んだ勢力もいたようだが、その声が大きくなることはなかったし、むしろ党内外から批判の声も出、いつの間にかほぼ消滅した。
 だが、自民党政権がロックダウンと私権制限に踏み出さなかったのは政権の自制力ではなく、当初、SARS-CoV-2感染者数が欧米のように激増していなかったからだ。
 その後、菅政権に変わり感染者数の激増、全国拡大、変異株への感染者等も出てきたが、欧米やブラジルのような「大流行」に至っていないのは幸いだった。

 だが、政権がハード化しなかった代わりに目立ってきたのが民衆ファッシズム。TV等のメディアが「三密」「マスク未着用」等の事例、現象をことさらに取り立てて国民を煽り続けた結果、不安に陥った国民の中には過度に反応するものが頻発し始めた。
 「自粛警察」「マスク警察」という「お上」の意向に反して営業したり、県外ナンバー車やマスク未着用者に対する過度に批判したり、嫌がらせをする輩で、戦中の国民ムードとよく似たものを感じ不気味だ。
 福岡でも路上でマスク未着用の人と擦れ違った際に「なぜマスクをしていないのか」と「注意」して口論からつかみ合いの喧嘩になり、全治約1か月の切り傷を負わせたり、地下鉄車内で喧嘩になった例もある。

 こうした例は全国でかなりの数に上ると思われるが、さらに不気味なのはTV等に「コメンテーター」として出演し、自粛要請ではダメ、罰則を課すべきだと主張する人達(中には弁護士もいた)が目立ちだしたことだ。
 その一方、COVID-19拡大初期の頃に「お上」の意向に従わない人を「非国民」と呼び、糾弾した、戦中に酷似した社会を感じ、反対や懸念の声を上げていた人達が感染症の拡大とともに沈黙を守りだしたのも嫌な雰囲気だ。

 代わりに聞こえ出したのが「SARS-CoV-2など存在しない」「マスク反対」「陰謀だ」と叫ぶ声で、彼らの中には「トランプ信者」も多数いるようで、大統領選挙で不正が行われた、本当はトランプが勝っている、と主張し、日本国内でデモまで行っている。
                                        (5)に続く



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