人は進歩しているのか、それとも退歩か。(2)
〜人類は歴史に学ばない


人類は歴史に学ばない

 まあ教師による性犯罪だけでなく、冒頭にも述べたように政治の世界も金融犯罪も社員による使い込み・着服(横領)も30年前と全くと言っていい程変わってない。むしろ使い込み・着服金額は比べ物にならない程増えている。実のところ、もう1億円や2億円の着服では驚かなくなった。それ程、被害額が大きくなっている。

 つい最近も第一生命保険の営業職員が顧客から詐取したと訴えられていたが、その額はなんと19億円余り。金額の桁違いの多さにも驚くが、詐取した営業職員が89歳の女性と知り、たまげた。しかも全国でもトップのセールスウーマンという。
 まず、その年齢まで社員でいられたことにも驚くが、山口県の一営業所の営業職で、というと失礼だが、首都圏と違い地方都市に居ながら全国トップの営業成績を上げているわけで、「営業の神様」みたいなものだろう。事実、講演なども多かったようだ。
 不思議なのはそれ程の成績を上げていれば収入も多いはずで、余程派手な生活でもしなければカネに困ることはないだろうと思われる。派手な洋服を着るわけでも、貴金属をチャラチャラと身に着けるわけでも、豪邸を新築して住んでいるわけでもなさそうで、家賃7万円の部屋に住み続けていると聞けば、ますます不思議である。動機等は今後の裁判で明らかにされるのだろうが、こちらの理解を超えており、なぜ、と首を傾げるばかりだ。

進歩ではなく退歩する人類

 こうしてみてくると、人類は進歩していないのではないか。古代遺跡などを見ると進化論は誤りではないかと思ってしまう。マヤ文明や古代エジプト文明を見て、機械もない古代の人達はどのような方法でこんな建造物を造ったのだろうかとか、人力だけで建造するには何千人もの労働力と、かなりの年数を必要としたに違いないと考えるのは現代人の自惚れで、本当はずっと昔の方が文明も技術も優れており、人類は進歩どころか退歩しているのではないだろうか。
 トランプのアメリカを見れば、民主主義はギリシャ時代から進んだどころか、逆に退歩しているとしか思えないではないか。ヨーロッパも日本も例外ではない。世界の歴史は明らかに逆回転している。
 歴史に学べと言うが、歴史は繰り返す、という方が真実に近いかもしれない。いや、そうだろう。

 まあ我と我が身を振り返っても進歩どころか退歩しているのは明らかで、この頃とみにそのことを感じる。
 転学部までして哲学者を志しはしたものの、大学や社会を取り巻く当時の情勢の中、さらなる進級を諦め、「象牙の塔」を追い出された時、自分に3つのことを課した。そのうちの2つは成したが、残る1つ、市井の哲学者として哲学書を書く、という誓いは未だ果たされないままだ。
 天才的な哲学者が多かった中で、大器晩成型のヘーゲルを励みに頑張ってはみたものの、ヘーゲル哲学のあまりの難解さに早々に討ち死に。それがあったからかどうか、難しい内容でも分かりやすく書かなければ意味がないと考え、極力難しい単語や難解な言い回しを避け、分かりやすい文章を書くことだけは心がけてきたつもりだが、これは進歩とは関係ない話。20代がピークで、その頃を境に頭は退化し始め、この頃は加速度的に進んでいるので、もう哲学論文は書けないという言い訳である。




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