高級・高額ホテルの逆を行くホテルチェーンがニッポンを救う(6)
〜365日同一料金のAZホテル


365日同一料金のAZホテル

 「HOTEL R9 The Yard」はたしかに庶民の味方である。朝食付き2人1万円以下で泊れるのだからコストパフォーマンスはいい。それでも休・祝日前日の料金が平日より高くなる。
 できることなら曜日に関係なく同一料金。それにちょっとした朝食でも付いていれば言うことなしだが、そうそう虫のいい条件のホテルはないだろう。
 そう思っていたが、1昨年のシルバーウィークに広島県三原市でほぼ希望に叶うホテルで1泊した。

 ホテルの名前は「HOTEL AZ」。全国チェーンのビジネスホテルである。場所は三原市の中心部から少し外れているが、車だからホテルの所在地はそれほど問題にはならない。むしろ駐車場完備で無料というのがうれしい。

 宿泊料はツインで10,720円。朝食は無料サービス付きだが、近くにコンビニはあるものの食事できそうな施設がなかったたので夕食付きのプランにした。つまり1泊2食付きで10,720円。これ、1人分の料金ではなく2人の合計金額なのだ。

 ここまで安いと逆に心配になる。バス、トイレは部屋にないのではないかとかアメニティグッズもないとか、その辺りでコストカットをしているのではないかと。
 しかしそれらは全て杞憂だった。部屋でWi-Fiも使えた。

 夕朝食付きといっても料金が料金だけに温泉地のホテルの食事のような、あるいはそれに近いようなものを期待する方が無理だが、贅沢さえ言わなければ十分許容範囲だろう。
 夕食のイメージはレストランではなく食堂の定食。種類も多くはなく3、4種類の中からどれか1種類の定食を選ぶパターンだったが、このあたりはホテルの所在地によって若干違うようだ。
 生ビールは500円で飲み放題。レストランで事前に現金支払いだったが、係りの女性から「3杯飲めば元が取れるからお得です」と勧められ、それに従った。
 朝食はバイキング方式。品数は多くはなかったが、これも十分許容範囲内。

 このホテルチェーンの運営会社は株式会社アメイズで、創業者は穴見保雄氏。ファミリーレストラン、ジョイフルの創業者で、大分県別府市の亀の井ホテルを買収(後に他社へ売却)し、その後ジョイフルと似たコンセプトでビジネスホテル、HOTEL AZを全国に展開している。

 現在、アメイズの社長は穴見保雄氏の次男、賢一氏がなっている。長男は陽一氏でジョイフルの社長も務めていたが、今は外れ政治家(元衆議院議員)になっている。
 私は穴見保雄、陽一両氏にそれぞれ別の時期に取材したことがあるが、保雄氏と陽一氏は経営方針が違っているのを感じた。
 保雄氏が亀の井ホテルの経営に集中するためジョイフルの経営を陽一氏に譲り、それまで陽一氏がジョイフル中国(中国地方)の社長からジョイフルグループの社長に就任して間がない頃だったと思うが、取材時に前任者、保雄氏の方針に批判的な言辞を口にしたのを聞き、おやっ、と思ったのが記憶に残っている。保雄氏がホテル業に進出したことに批判的だったように感じた。
 ほかにもチェーン展開の方法でも2人は若干意見の相違があったようで、保雄氏は地域会社を設立し、それを本部が束ねるという方向なのに対し、陽一氏は本部に権限を集中する中央集権的な方法を採用した。

 まあ、それはともかくとしてHOTEL AZの存在は庶民にとってうれしい。1階にはグループ企業のジョイフルや同じくグループ企業のバイキングレストラン志高が入っており、周辺に飲食店がなくても困ることはない。
 インバウンドを当て込んだ宿泊施設、コロナ禍をきっかけに値上げに走る宿泊施設が増える中で、HOTEL AZやホテルR9のようなリーズナブルで快適に宿泊できるホテルの存在はうれしいし、庶民を大事にする企業こそがニッポンを救う。
                                (完)
#リーズナブルで納得のホテル


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