KDDIへの回線使用料が経営を圧迫
もし当初の計画通りに進んでいれば今頃は4番手のキャリアとして大手キャリアの仲間入りをしていたはずだが、いまや大手キャリアは当分の間、楽天モバイル恐るるに足らずと考え、その間に楽天モバイル潰しにもなる新プランを次々に投入している。中でも楽天モバイルにとって誤算だったのは総務大臣の「キャリア本体の値下げ」発言だろう。これが援護射撃になるどころか、楽天モバイル潰しに力を貸すことになった。
ドコモがahamoプランで大容量データの大幅に値下げ予定を発表したものだから楽天モバイルの優位性は一気に霞んだ。「UN-LIMIT V」と勝利(Victory)を意味する「V」まで付けた自信のプランだったが、同社の目論見は早くも崩れてしまったと言える。
自社回線整備の遅れはユーザー獲得数が増加しない点が第一だが、それ以上に問題なのはKDDIに支払うauの回線使用料だろう。
というのも楽天モバイルは自社回線エリア外はau回線を借り受けてユーザーに提供している。当然、その分使用料をKDDIに支払わなければならない。本来ならユーザーから通信料が入り、それをKDDIに支払う原資にすればいいはずだが、同社は現在のところ1年間無料でユーザーに提供している。
つまりau回線は使われれば使われるほど同社はマイナスになるわけで、それを防ぐためにも早めに自社回線の整備を進めなければならない。ということもあり、今秋以降、自社回線エリア状況をウェブに開示し、首都圏その他一部の都市でほぼカバーできたのでKDDIとの契約を打ち切ったと発表しているが、これが曲者だ。
実はエリア内と言っても地下鉄の駅構内とか地下街やビルの地下、ビルとビルの間などで繋がらない箇所が相当数ある。3大キャリア並みに、エリア内であっても繋がるようになるにはまだ先のことだろう。
初期のソフトバンク回線がそうだったが、繋がらない箇所が多いと契約を解除するユーザーが出て来る。現在、「UN-LIMIT V」に加入しているユーザーの相当数は「とりあえず様子見」感覚で、繋がらないとか時間帯によって回線速度が極端に遅くなるなどの回線品質が悪いと見れば即座に解約して他社へ移行するだろう。
それは楽天モバイルにとって二重の損失になる。1年間無料で提供したにもかかわらず、1年後の有料切り替え前にユーザーに解約されれば「タダ乗り」をされただけに終わるだけでなく、マイナスイメージが広がると新規加入者の獲得にも影響するからである。楽天にとっては頭の痛い問題だろう。
楽天を追い詰めるMVNO各社
楽天モバイルにとって頭の痛い問題は他にもある。自社回線整備の遅れが他キャリアのみならずMVNO各社にも対抗する時間を許したことだ。
すでに見てきたように楽天モバイルの「データ使い放題、電話かけ放題」という圧倒的有利さが実は見かけの「V」だったことが分かり、ドコモのみならずMVNO各社も「後出しジャンケン」で対抗策を打ち出しやすくなった。
楽天モバイルのエリア外はau回線へ接続され、データ量が5GBまでなら別に楽天モバイルでなくてもいいことになる。
例えばマイネオはデータ使い放題と音声通話込みで1,660円プランを設定している。ただし通信速度は500Kbpsと楽天モバイルの1Kbpsの半分の速度だが、高速、中速は自由に切り替えられるようになっている。
またイオンモバイルやauのサブブランドUQモバイルには60歳以上のシニアを対象にしたプランがある。イオンのシニア対象「やさしいプランS」は通信速度こそ500Kbpsに設定されているが、10分かけ放題を付けて2,130円である。
UQモバイルも60歳以上のシニア対象のプランを最近導入した。データ量3GB、通話は制限なしのかけ放題で1,480円からという設定。
MVNOの老舗IIJmioも従量制プランを導入。使った分だけ支払うムダがない料金設定で、月によって利用データ量が変わるユーザーに好まれている。以前、フリーテルが従量制プランを導入しており、私も加入していた。自宅や職場ではWiFi接続という環境が増えており、外で消費するデータ量は少ないというユーザーは少なからずいるはずで、従量制を導入するMVNOはもっと増えていいと思うが。
最近の傾向としてはデータ量に換算しない接続を増やしたり、多少速度を犠牲にしてもデータは使い放題など、データ量をできるだけムダにしない方向に動いているが、ユニークなのがy.u mobile。ヤマダ電機とU-NEXTの合弁会社で、最近サービスを開始した新しいMVNOだ。
ユニークなのは余ったデータ量が繰り越せること。翌月まで繰り越しは多くのMVNOでも行っているが、y.u mobileの場合、翌月までという制限はなく「永久不滅」(ただし上限100GB)。 (3)に続く
|