楽天、MVNO各社を追い詰めるドコモのahamoプラン(3)
〜「合理的プラン」で巨像に挑む日本通信


今後のトレンドはシンプルプラン

 MVNOの魅力が低料金なのは言うまでもないだろう。だから各社とも料金面の安さを積極的にPRしている。しかし、いざ加入しようとすると料金設定が細かすぎて、果たして自分に合っているプランはどれを選べばいいのか迷うだけでなく、分かりにくい。
 例えばUQモバイルのシニア対象プランはデータ量3GB、通話無制限かけ放題で「1,480円〜」と随分安く思えるが、この「〜」が付いているところが問題だ。表記が「1,480円」ならスッキリと分かるが、「1,480円〜」だと1,480円は最低料金で、場合によってはそれ以上の料金になるようだと考えてしまう。
 そこで細かい文字で書かれている注意書きを読むと、指定スマホを使い、家族割り等に加入した場合に適用される料金だと分かる。
 まあ、このような条件を課すのはUQモバイルに限ったことではなく、3大キャリアや他MVNOでも行っていることではあるが、とにかく条件が多すぎる。こうした分かりにくさが格安SIMへの乗り換えが進まない一因でもある。

 一目瞭然、誰でも分かる料金体系にして欲しい。こうした声に応えたのが楽天モバイルの「UN-LIMIT V」でプランは1つだけと分かりやすい点は大いに評価したい。
 それに対抗して打ち出したドコモのahamoもデータ20GB、料金2,980円の1本のみと分かりやすい。
 だがahamoがサービスを開始するのは来年2021年3月からだ。それに対抗したのが日本通信の「合理的20GBプラン」。70分通話無料が付いて20GBが1,980円のサービスを開始した。ただし、現在は16GBまでで、ahamoの開始に合わせてデータ量が20GBに増量される。ahamoより1,000円も安い画期的、革命的なプランで動画をよく見るヘビーユーザーの受け皿になるのは間違いないだろう。

「合理的プラン」で巨像に挑む日本通信

 とにかく日本通信という会社はユニークで従来も従量制料金プランを導入したりと常に画期的なプランを次々に投入している。その割には一般への認知度低いと思われるが、数年以上前に同社SIMは速度が遅いという評判がたったり、プラン内容がコロコロ変わってきたことも一因かもしれない。

 ただ業界の革命児であることは間違いなく、最近では旅行会社のHISが同社のSIMを利用したプランを投入しているし、イオンモバイルも今はどうか分からないが初期には日本通信から仕入れていたように法人向け販売が多いようだ。

 ユーザーからすれば痒い所に手が届くようなプランを市場に投入する、ちょっと変わった企業と映り、どういう人が経営の舵取りをしているのか興味が湧き、トップの経歴を調べて納得した。
 現在代表権を持っているのは代表取締役会長の三田聖二氏と代表取締役社長の福田尚久氏。
 両氏ともにそうそうたる経歴の持ち主で、三田聖二氏はモトローラ・インク副社長、アップルコンピュータ(現Apple Japan 合同会社)代表取締役社長、アップルコンピュータ株式会社(現アップル)本社副社長等を歴任し、平成27年6月日本通信代表取締役会長に就任。
 福田尚久氏はアップルコンピュータ(現Apple Japan 合同会社)副社長を経て、平成14年4月日本通信に移籍し、平成27年6月から代表取締役社長就任。
 日本通信の在籍歴は福田氏の方が早く、かつ長いから、アップルコンピュータの先輩である三田氏に代表取締役会長就任を要請したのかもしれないが、そのあたりのことは詳しく調べてなく、あくまで私の推測である。

 ここまでの経歴の持ち主だから企業は黒字経営と考えるが、赤字経営が続き未だ脱しれていない。今回のプランはドコモに対する挑戦的なプランであり、業界に革命をもたらしかねないプランだが、先行投資だけに今後同社の経営がどうなるか。その点だけが唯一の懸念材料だが、同社には頑張って欲しいと思う。


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