陰りが見え始めた楽天経済圏(3)
〜西友の買収はプラスに働くのか


西友の買収はプラスに働くのか

 楽天はアマゾンを懸命に追いかけているように見えるが、追いかければ追いかけるほど差が開いていく一方のように見える。
 社内公用語を英語にしたり、外国の電話会社を買収したり、楽天市場や楽天モバイルの技術を海外で展開したいと発表したりしているのをみると、世界で活動するグローバル企業を三木谷氏は目指そうとしているのだろうなと思うが、それらはいまのところ成功しているように見えない。
 結局、国内だけで通用する企業なのに社内公用語を英語にする意味、メリットがあるのかと疑うが、そのことが逆に意思疎通の阻害や決定の遅れに繋がっているという指摘さえ関連企業からは漏れ聞こえてくる。

 まあ、それはさておき、最近、楽天で気になったのが西友の買収である。西友は2008年から米ウォルマートの完全子会社になっているのはご存知だと思う。店舗は主に都市圏に多く、九州、中国地方にはそれ程多くない。福岡県では西友子会社の食品スーパー、サニーの方がむしろ身近で馴染みがあるかもしれない。
 ウォルマートの子会社になった西友グループの店舗はチラシで特売を強く打ち出し集客する日本的な売り方をやめ、「エブリデイ・ロープライス」というウォールマート流のやり方で経営の立て直しを図ってきたが西友の業績は上向かず、ここ数年、身売り話が密かに噂されていた。

 そして今回の身売りになったわけだが、西友株の新たな引き受け手になったのがKKR(コールバーグ・クラビス・ロバーツ)と楽天。西友株は前者が65%、後者20%で、残りの15%はウォールマートという比率である。
 持株比率トップはKKRだが、同社はアメリカの投資ファンド。同社が西友の経営に直接深く関わり続けるつもりはなく、業績が上向いたところで売却して売却益を売るのが目的なのはお分かりだろう。
 その時の売却先に想定しているのが2番目に多く西友の株を保有している楽天なのは想像に難くない。

 ところで、楽天と西友は2018年10月から「楽天西友ネットスーパー」を協働運営している。その関係をさらに強化し、小売業のDX(デジタルトランスフォーメーション)、オムニチャネル化を考えているのだろう。
 オムニチャネルとは店舗、ネット、モバイル、SNS、カタログなど、あらゆるチャネルを連携させて消費者にアプローチする方法で、オムニチャネルと聞けばかつて鈴木敏文会長(当時)率いるセブン&アイグループがオムニチャネル化を目指していたことを想起する。結果、同社は失敗したが、当時と今では時代が違うと言われるだろうし、時代がそちらに流れている(そうならざるを得ない)というのは理解できる。

 しかし、楽天が西友の実店舗を買うメリットはあるのかと考えた時、ここでもアマゾンの影がチラついて見える。ネット通販で巨大企業にのし上がったアマゾンはここ数年、実店舗の展開に力を入れている。それは1つにはネット通販だけでは小売業の全分野、特に食品分野を獲得できないからで、もう1つはネット全盛の今でもやはり実店舗で買い物をする人が半数以上存在するわけで、そこも獲得したいと考えているからだ。

 楽天もアマゾンに習えで実店舗の獲得に動いたのかも分からないが、問題は先行投資にしても西友の実店舗の獲得がプラスに働くのかどうか。西友店舗は古い建物が多く、業績の立て直しには最低限、店舗のリニューアルが必要だろうが、そこまでの出費ができるのかどうか。費用対効果があるのかどうか。それでなくても楽天モバイルの出費が嵩んでいる時に。
 そういうことを考えれば、楽天が現在の持ち株20%を近い将来、増やすどころか20%のまま、あるいは逆に売却して手を引く可能性すらあると思うが、それらはひとえに今後、楽天経済圏がどうなるかにかかっている。
                      (4)に続く

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