栗野的視点(No.716) 2020年12月7日
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
企業経営を突然襲ったCOVID-19、大戸屋、ドンキの今後は
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
急に寒くなったかと思えば、また11月下旬の気温になると言う。一体全体、この頃地球はどうなっているのだろうと思う。
先日も福岡の友人、Y会長から電話があり「昔、11月の大相撲の頃は寒かったんですよ」と言われた。そう、私が福岡に来た頃は大相撲期間中は必ず雪が降っていた。わずか半世紀前になるかならないかくらいで、その間にこれほど気温が上昇するとは誰もが思わなかったはず。
温暖化はもう誰の目にもはっきりそうと分かる形で現れているにもかかわらず、温暖化は「フェイクニュース(偽情報)」だと頑なに否定するアメリカ人がいるのは不幸なことだ。
そう言えば彼は未だに選挙の負けを認めないばかりか、一切のエビデンス(根拠、確証)も提示せず、ひたすら反対意見を「フェイクニュース」と罵っているが、それを信じる人がアメリカ国内外に一定程度いるのを見ると、民主主義も正義も真理も崩壊しつつあると思わざるをえない。
「我々はどこに行くのかーー」。この10年程、そのことを考え続けているが、その一つの答えが、このアメリカ人なら人類は未来へ希望を抱けなくなる。
敵対的買収で経営陣刷新の大戸屋
それはさておき、今世界を危機に陥らせているのは未知のマイクロ(micro)生物だろう。相手が小さすぎて姿が見えないことが人々をよけいに怯えさせている。その怯えは多分に実態以上だと考えるが、無防備では被害をさらに大きくする。やはり最低限の備えは必要で「戦略的には相手を軽視し、戦術的には相手を重視する」必要がある。それを怠れば急な変化に対応できない。
2020年という年は世界に大きな変化をもたらした、と後に語られるに違いない。マイクロ生物が日本経済はもとより世界経済に大きな打撃を与え、現在の資本主義というシステムをはじめ、我々が「信じていた」システムはあまりにも脆いものだったことを思い知らされたのだから。
マクロの話はさておき、マイクロとまではいかないが、もう少し身近な部分の話、COVID-19関連で大きな影響を受けた企業の動きを見てみよう。
今回はCOVID-19の流行という「予期せぬ出来事」もあり、その影響で企業トップの交代という激震に見舞われた会社がいくつかある。
例えば大戸屋。「牛角」や「かっぱ寿司」などを運営するコロワイドによる敵対的買収がメディア等で報じられたから名前ぐらいはご存知の方も多いと思うが、同社は店内調理にこだわった定食屋。私も旅先を含め何度か利用したことがあるが、リーズナブルな価格帯で「家庭の食卓にある献立」が食べられるのが嬉しい店である。
ところがコロワイドに敵対的買収を仕掛けられ、今年9月の臨時株主総会でコロワイドの連結子会社になった。店内調理という独自性より、セントラルキッチン方式による経営改善を株主が選んだということだが、遠因は創業者一族と後継経営陣との人事を巡るトラブル。
一言で言えば創業者の息子の能力をどう見るかということだが、創業者一族にはうちが作った会社だ、という意識があったのだろう。対して後継経営陣には創業者の理念を大切にし会社を支えてきたのは自分達だという思いがあり、そこに金銭的なことが絡んだという、よくある創業者亡き後のお家騒動。
こういうパターンでは後継経営陣の方が優位に立つことが多いが、問題は大戸屋の売り上げが下がっていただけでなく、それに歯止めがかからなかったこと。
原因の一つはメニュー改定で価格を上げたことによる客離れ。その直後から売り上げが下がっているから、明らかに値上げがマイナスに影響したのは間違いない。
もう一つはCOVID-19による外出自粛の影響。ただ後者は飲食業界全般に言えることで大戸屋に限ったことではない。
今後は店内調理を一部にとどめ、多くはセントラルキッチン方式を活用することでコスト削減を図り早期に黒字転換を図るとのことだが、従来方式を支持する従業員、顧客の支持をどこまで得られるかにかかっている。
そこに「コロナ禍」が加わっているから顧客が戻り経営の立て直しができるには少し時間がかかるかもしれない。大塚家具とは比較すべき対象ではないかもしれないが、「お家騒動」でブランド価値が削がれたという点では同じだろう。
果たしてコロワイドの買収で大戸屋に客が戻るかどうか。COVID-19による外出・外食自粛という動きが戻らない限り難しいと思うが、どうなるか。
もう一つの不安要因はコロワイドのグループ店自体もCOVID-19の影響で売り上げを落としているため大戸屋再建のために資金を融通する余裕がないということを考えるとコロワイドグループにとって大戸屋の買収はよかったのか悪かったのか。
(2)に続く
|