観光客のマナーは最悪
室津を訪れた4日後、赤穂市坂越に行った。赤穂は四十七士の討ち入りで有名な町で大石神社もあるが、今回、そちらには寄らず港町を目指して一直線。
こんな地方の港町に訪れる人はいないだろうと思っていたが、そうでもないらしい。
「10月第2日曜日に行われる坂越の船祭りには多くの人が集まり賑わいますよ。大避(おおさけ)神社から神輿を担ぎ船に乗せ、向かいの生島(いきしま)に渡ります。生島に渡れるのかですって。ダメです。あそこは神の島で普段は地元の人ですら立ち入り禁止なんです。
船祭りの時にぜひお出でください。獅子船を2艘の櫂伝馬が曳き、その後に5艘の頭人(とうにん)船、樂船、神輿船、歌船などの船団が幟を立てて進みますから賑やかですよ」
「祭りに参加する若い衆が減っているのでは、ですって。そうなんですけど、祭りの時期にだけ帰って来る者がいますから、まだなんとか」
大避神社の参道口で暖簾をかけた家があり、玄関脇に赤い郵便ポストらしきものが設置されていたので「まさか本物ではないだろう」と思いつつ眺めていると家の住人が横から現れたので「ここの人ですか。ここは何の店ですか。それとも普通の家ですか」
と尋ねたところから会話が始まった。
もとはお店をされていたがご主人が亡くなったので商売はやめたとのこと。家の前のポストはネットで購入したとのことだが、たまに間違えて郵便物を入れる人がいるらしい。
阪神淡路大震災の時は神戸に住んでいたと聞き、その時は朝鮮や中国の人たちに随分助けられた、交通機関もなく、なんとか通っている場所まで歩いて行き、そこから7、8時間かかって帰って来られたらしい。
「ところで、こんなというと失礼ですが、地方の港町に来る人はいないでしょ」と尋ねると「土日、祝日は多いんですよ。観光客はマナーが悪いから観光地化には反対なんですけどね」
そういえば、たつの市室津の加茂神社に詣でた時も似たような話を聞いた。神社境内にトイレが見当たらず、神社にしては珍しいなと怪訝に思っている時に地元の人らしき姿を見かけ声を掛けた。
「ここ、トイレはないんですか」
「トイレですか。どうぞこちらへ」と民家の庭先のような場所に案内された。
「釣り人のマナーが悪いもんだからいつもはカギをかけているんですよ」と言う。
「そんなにマナーが悪いんですか」
「悪いです!」
それを聞いてマナーが悪いのは外国人だけでなく日本人も同じかと感じたが、坂越でも同じような話を聞くと、最近、富士登山の問題をTVがよく取り上げているが、どこも似たような問題を抱えているのだと知った。
観光客には来て欲しいが、そこそこでいい。そう考えるのは地方に住む人のワガママだろうか。
はっきりしているのは日本人の気質が変わったということだ。自分さえよければと考え、他者を思いやる気持ちは微塵もなくなってきたように感じるのは私だけだろうか。
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