デル株式会社

 


移動販売が流通を変える(1)
経済第一主義的思考を捨てる


栗野的視点(No.796)                   2023年4月19日
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移動販売が流通を変える
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 もし、地方に対して「過疎、高齢化、商店ゼロ」という陸の孤島的なイメージを持っているなら、今すぐ変えた方がいい。過疎、高齢化というのは事実だが、必ずしも日常生活の買い物に困るわけではない。冷凍食品だけを食べているわけではなく、生の刺し身だって買える。
 それを可能にしているのが移動販売(宅配)で、今この分野への参入が相次いでいる。

経済第一主義的思考を捨てる

 「地方の時代」ということが言われたのはもう随分昔のことだ。にもかかわらず地方はずっと見捨てられ、切り捨てられてきた。その裏返しが「地方の時代」という言葉で、本気で地方をなんとかしようなどとは政治家、中央官庁の人間は考えてこなかった。
 彼らが考えるのは資本主義的な考えに基づく地方活性化だ。テーマパークや大型商業施設を地方に作ろう、観光で集客しよう、高速道路を作り首都圏からの移動時間を短縮しよう等々。
 それが今はインバウンド(海外からの旅行客)を取り込もうと少し形を変えてきたが、全ては資本主義的な発想による経済最優先の考え方に基づいたやり方である。その行き着く先は金を持っている富裕層をいかに取り込むかという富裕層相手のビジネス、儲け中心の資本主義的方法だ。
 その結果、首都圏と地方、持てるものと持たざるものとの格差は広がる一方である。

 なぜ、こうなるのか。それは地方と中央では視点が異なるにもかかわらず、地方の活性化云々という場合は常に中央の視点で地方を見るからだ。
 例えば小売り。中央の視点で考えれば地方に大型店を作れば地方の人は首都圏あるいは県庁所在地などの大都市と同じようなものを同じように買うことができ、生活が便利になるはずだ(全国展開の企業は儲かる)という考えで地方、郊外に大型ショッピングモールをつくってきた。

 その結果、地方の、地元の商店は廃業に追い込まれ、駅前商店街は全国的にほぼシャッター通りと化した。代わりに大型量販店やショッピングストリートが郊外に出来、そうした場所に行けば何でも買うことができ、価格も安い。
 一見、生活は便利になったように思える。だが、それは車があればという条件付きの便利さであり、車がなければ不便極まりない地に変わり果てた。

 そして今、かつて消費を支えた40代はシルバー世代になりモノを買わなくなっているし、買い物のために広い店内を歩き回るのにも疲れ、郊外店に出かける頻度が落ちた。
 次に待っていたのが郊外の大型量販店、ショッピングモールの閉鎖・撤退である。そのことが話題になるのは地元ぐらいで、それ以外の地で大きく取り上げるメディアは少ないし、消費者も対岸の火事で危機意識が少ない。
 結局、政治家も官僚もメディアも消費者さえもが東京などの大都会しか見てないのだ。
 そんな地方が今変わりつつある。必ずしも不便な地ではなくなっているのだ。
                                        (2)に続く


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