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ローカルビジネスこそ次世代ビジネス(6)
〜地方に移住、介護ビジネス起業


地方に移住、介護ビジネス起業

 地方に多くて都会に少ないものは高齢者。というのは冗談だが、人口比率からすれば地方に高齢者が多いのは事実である。では、この高齢者が消費の主体になれば地方でビジネスは十分成り立つということになる。
 だが、既存ビジネスでは高齢者は消費の脇役ではあっても主役にはなれない。例えば食は若者と比べて1/3近くにまで消費が落ちているし、会社勤めを離れれば衣類も以前ほど買わなくなる。代わりに金を使うのが趣味や旅行の分野。そう、この分野では中高年層は消費の主役である。
 といっても、それは足腰が丈夫で動ける人。それ以上の高齢者となるとどうか。しかし、いま、さらに今後最も増えていくのがこの層。ここをターゲットにできれば地方でも十分事業が成り立つことになる。

 4年前、人口7,000人程度の町で起業した女性がいる。そんな過疎地でどんなビジネス? いま流行りのIT系か1人起業、と考えるのが一般的だろうが、従業員6-7人雇っているから、地域の雇用にも貢献している。しかも、少しずつだが年々売り上げも人も増えているからバカにできない。

 この女性が起業したのは通所介護施設の運営。起業に至る細かい事情は省くが、ケアマネージャー(ケアマネ)として勤務していた社会福祉協議会を退職し会社を設立。ただ、その地域で長年ケアマネとして勤務し、地域のことは隅々まで知っていた、というわけではない。その逆で、他県から移り住んで1-2年。「やがてこういうことをしたいと思っていた」とは言うものの、計画の前倒しというか、数か月でスタートしたから傍から見れば「大丈夫か」という思いはあったようだ。
 男性の場合、一般的に綿密な事業計画を立て、場所もしっかり確保し、スタッフも過不足ないように揃えてから臨む。要は陣容だてを気にする(すべての男性がそうではないが)のに対し、女性の場合は陣容、外観へのこだわりは比較的少ないようにみえる。それよりは身近な問題意識からスタートするから最初は小規模でも、無理な投資をしていない分だけ失敗も少ない。
 この女性も自宅を通所施設として使い、自分はそれまで車庫として使っていたスペースを自宅用に改造したようだ。

 最初は少なかった高齢者の施設利用者も少しずつ増え、それにつれてスタッフも1名2名と増えていった。ところが、一大危機に陥ったのが今春。
「もう閉鎖するしかないと思いました。なんとかしてと頼んだんです」
そう聞いて、利用者減による経営危機かと思い、思い切って尋ねてみた。
「お陰様で利用していただいている人は増えているんです。ですがスタッフが少なくて、このままではお世話ができないから閉鎖するしかないと本気で思いました」
 チラシも作って7,000枚配ったが「チラシを見ての問い合わせは1件もなかった」。
そこで以前の勤務先のケアマネなどに人を紹介してくれるように頼んで、なんとか人員を確保できたという。
 地方の人口減は雇用の場がないからだと言うし、私自身もそう考えていたが、雇用の場はあっても高齢化が進む過疎地は働ける人も少ない。それでも人を採用できたのは人のツテや繋がりのお陰と言う。
「地方はいいですよ。もう大阪に帰ろうという気はありません」
 今後は独居老人の見回りも兼ねて弁当の宅配なども開始したいという希望も持っている。
                                                (7)に続く


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