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ローカルビジネスこそ次世代ビジネス(7)
〜地方のニーズを商品化する


地方のニーズを商品化する

 地方には地方のニーズに合った商品がある。問題はなんらかのプラスワンをいかに付け加えるかだ。そうすれば思わぬところに販路が広がることがある。
 例えばリヤカー。昔はよく見かけたが、見かけなくなってからすでに久しい。
ところが、このリヤカー、思わぬところで利用が広がっている。それも地方ではなく都会の真ん中で。といえば驚くかもしれないが、誰もが一度ならず目にしているはずである。東京都内や福岡市内、岡山市中心部のあちこちで。

 そんなリヤカーを作っている会社が長崎県・島原半島にある。
そのリヤカーを私が初めて目にしたのは2年前の11月。福岡市で開催された「モノづくりフェア」の展示会場だった。
 自転車屋を連想させる社名とリヤカーに「モノづくりフェア」がすぐ結び付かず、ブースの前で足を止めて思わず眺めてしまった。
 リヤカーなんか出展してどうするんだ、どこに新しさがあるのか、今どき需要があるのか、というのが正直な気持ちだった。
 リヤカーと言っても昔よく見かけた、黒くて、重く、幅広いヤツではなく、スチール製の白っぽいフレームで作られたものだったが、姿形はどこから見てもリヤカーだった。しかもご丁寧に自転車に付けられている。
 恐らく誰もが「こんなもの売れるのか」「誰が買うのだ」と思うに違いない。実際、私自身がそう思った。大量生産、大量販売できる商品でないことは明らかだ。それでも少しは売れなければ意味がない。その少数の顧客がいるのかいないのかが疑問だったのだ。

 「島原の農家の人のニーズから生まれた」と言う。
地方の高齢化はどんどん進み、農作業も高齢者が中心になると、重いものを持ったり運んだりはできない。若い時は何でもなかった一輪車もバランスを取るのに力がいる。「一輪車より安定している二輪車。それもできるだけ軽いものが欲しい」
 そんな要望に応えて作ったリヤカーだと言う。雲仙普賢岳の噴火も開発の動機になった。あの時、高齢者を乗せて運べたら、1人でも2人でも助かったのではないか。そんな思いが軽くて、運びやすいリヤカー開発に向かわせた。
 大量生産して売れるような商品ではない。だからオーダーメード。「これは軽くていい」。利用者にそう言って喜ばれた。「軽い」という意味の九州弁をそのまま商品名にした。

 ユーザーの要望を取り入れ、その後も改良を続けた。それが某宅配業者の目に止まり、宅配専用にある程度まとまった数の注文も来た。
 改良と同時にタイプも増やした。私が目にしたのは折り畳み式。これは面白いと感じた。ネジを緩めたり、部品を取り外したりすることなく、ワンタッチで折り畳めるのがいい。自転車1台分のスペースに収まるから、場所を取らず邪魔にならない。自転車の後ろに簡単に取り付けられる。
 地方のニーズから生まれた商品だが、逆に都市部でも需要が生まれている点が面白い。

 以上見てきたように、地方ではビジネスが成り立たないのではなく、従来型のビジネス、つまり大量生産・大量消費型ビジネスが成り立たないだけで、少量生産、小規模ビジネスは十分成り立つ。
 商品化の視点は、地方ならではの特徴ある商品、地元のニーズに応えた商品をいかに開発するかだろう。
 ただし、儲かりだすと欲が出て、大量生産、拡大路線に舵を切りだす。その時が前轍の道を歩むかどうかの岐路になるだろう。
                                                          


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