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ローカルビジネスこそ次世代ビジネス(3)
独自の戦略で過疎地に出店する「つるや」


過疎地にこそ出店

 経済成長時代の企業戦略は拡大路線でよかったが、高齢化社会になると市場はいやが上にも縮小していく。それでも拡大路線を取り続けるためには、市場を国外、なかでも成長著しい新興国に求めるほかない。そして多くの企業がその方向に舵を切っている。「地産地消」「二酸化炭素排出削減」という言葉はすでに葬り去られているような感さえあるが。

 そうした動きの中で、あえて地方、それも限られた地域にしか出店していない企業がある。株式会社つるやが展開する「おべんとうのつるや」だ。
 最初に「つるや」の店舗を目にしたのは岡山県北東部の田舎町だった。表の看板で「おべんとうのつるや」と弁当を謳っていたので弁当中心の店かと思ったが、中に入ってみると、弁当屋というより食品中心のコンビニのようだった。店舗面積は平均的なコンビニより少し狭い。
 過疎の田舎町では早晩閉店するに違いない。初めて同店を目にした時そう感じた。だが、予想は外れ、結構続いている。しかも、高齢化が進んだ過疎地にしては案外利用客が多い。かくいう私も帰省中は、100m程の距離に同店があることもあり、ちょくちょく利用している。

 当初、遠からず閉店するだろうと考えたのは、車で15分も行けばマルナカ(イオン系の食品スーパー)、イズミの食品スーパー・ゆめマートがあるからだ。そして両店に隣接してヤマダ電機、エディオン、ホームセンター、回転寿司店などが立地している。田舎町とはいえ、車さえあれば日常の買い物に困ることはないし、多くの買い物客はそちらに行くはずだ。
 となると「つるや」を利用する客は車を持たない人が中心ということになる。当然その数は多くないし、車に乗らないのは高齢者が多いから、購買単価も低くなる。結果、売り上げ不振で撤退。これが当初の見立てだった。だが予測は外れ、結構頑張っているから驚いた。

 「つるや」に興味を持ったのはいまから3年前。それまでも岡山県北、特に美作(みまさか)地方を車で走るとちょくちょく目にしていたが、岡山県下では最も遅く桜が開花することで有名な、蒜山(ひるぜん)高原の茅部(かやべ)神社に行った時、農作業をしている老婦人と立ち話をしてからだった。
「この辺は買い物に困りませんか」
「福祉タクシーに相乗りして、つるやか道の駅に行きます」
 この時まで「つるや」はうどん屋だと思っていたので、うどんを食べに行っているのかと思っていた。
 それにしても、こんな過疎地でも営業しているとは、と感心したのを覚えている。
                                       (4)に続く

男の美学


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