地方でも長時間営業が可能
ひと言で言うと、時計の歯車を昭和に戻したような店である。少なくともチェーン展開している店舗で、平成の時代にこのような店舗は見たことがない。店の外観、看板、営業時間のすべてがまるで同じにするのを避けているかのように統一感がない。
看板は「おべんとうのつるや」と表記しているものもあれば「お弁当 食事処 うどん」(蒜山店)、「元気いっぱい食堂 できたて総菜 あったか弁当 定食・ラーメン うどん・丼」(吉井店)、「来んちゃい・見んちゃい・食べんちゃい」(岡山弁で「来て、見て、食べて」という意味)と大きく表示している店舗もあれば、「コンビニ」を強調している店舗もある。
次に外観の色使いが店によりバラバラ。建物の造りも三角屋根風だったりコンビニ風だったりと、やはりバラバラ。
チェーン展開する店でここまで統一感がないのは珍しい。「統一」されているのは岡山県北中心の店舗展開で、県南には店がないことだ。県南、要するに瀬戸内側、山陽自動車道側には1店舗もない。普通では考えられない出店形態である。「人口が多い岡山市周辺の県南に出店した方が売り上げが上がる」。コンサルタントならこう指摘するだろう。
では、県南を中心に店舗展開すればどうなっているだろうか。
まず激しい競争にさらされることになる。競合はうどん、らーめん、定食屋ばかりではない。一番の競合はコンビニだろう。半径100m以内にコンビニができれば、品揃え、商品力の点でとても太刀打ちできないのは明らか。
<競合がいない過疎地だからこそ存在意義があるし、地元住民から支持されている、といえる。>
ここにこの企業の特徴がある。経済成長時代の逆を行くビジネスモデルだ。
ところが、消極的な戦略で地方に出店しているわけではなさそうだ。それは同店の営業時間にも表れている。
開店時間は最も早い店舗で午前6時。遅い店舗でも午前7時で、この間に同6時20分、30分、40分の店がある。
ホームセンターの開店時間が早いところで午前7時〜8時だから、「つるや」の開店時間がいかに早いか分かる。そんな早朝から客がいるのかと思うが、仕事前の腹ごしらえをここでしている人が多いということだろう。
でも、逆に閉店時間が早いのだろう。地方の店舗は夜早く閉まるのが特徴。だって、夜遅くまで動いている人はいないのだから。
そう考えるのは都会人の勘違いだ。まあ近年は、地方でなくても中心部の商店街でさえ夜6時、7時に閉まっているから、そう誤解しても仕方ないが。
さて、同店の閉店時間である。最も早いのが午後9時の蒜山店1店舗のみで、他の店舗は午後10時〜同12時と遅い時間まで開いているのだ。
当初、コンビニエンスストア「セブンイレブン」の営業時間が午前7時〜午後11時で、「開いててよかった」というCMを流していたが、その飲食店版と言っていいだろう。
もちろん、客がいるから遅くまで営業できるわけだが、それにしても夜12時までの営業時間には正直驚いた。そして「開いててよかった」と、私自身が感謝したことも。というのは、都会のつもりでスーパーに午後7時前、買い物に行くと刺し身や惣菜、弁当の類いはほとんど残ってないのだ。夜9時、10時まで開いているにもかかわらずだ。だが「つるや」なら、総菜も買えるし、なにより店内で丼物や定食、うどんなどを食べることができるのだ。
(5)に続く
|