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先進国でなぜ民主主義が危機に瀕しているのか(1)
以前から計画されていた戒厳令


栗野的視点(No.844)                   2024年12月27日
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先進国でなぜ民主主義が危機に瀕しているのか
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 3日夜、韓国尹(ユン)大統領が突如、非常戒厳を発令した。
私がこのニュースを知ったのは翌朝の朝食時。前日は午後8時には病室のベッドで早々と眠っていたため、リアルタイムで知ることはできなかったが驚愕した。

 驚愕した理由は民主主義国ではありえないと考えられていた戒厳令が発令されたからだが、その一方で起こり得るかもという気が以前からしていたのも事実だ。ただ韓国で起こるとは思いもしなかったが。

以前から計画されていた戒厳令

 当初、尹大統領の思い付き的な非常戒厳発令かと見られていたが、徐々に明らかになってきた情報からは、昨年末から計画されていたらしきことが分かってき、直前に後先考えずに発令したわけではなさそうだった。
 とすれば「突発的」でも「追い詰められて」の発令ではなく前々から計画されていたことになるが、その割には随分杜撰な感じがする発令だった。

 民主主義国家で発令された戒厳令、韓国国内では内乱罪と言われているが、実質的にはクーデターだろう。
 独裁国家でよく起こるクーデターと全く同じやり方だ。非常戒厳発令理由に外敵(北朝鮮)の脅威を挙げている点もそうで、内憂を打破する時に外に敵を創るのは独裁政権、強権政治の常套手段だ。
 歴史上何度も繰り返されてきており、今回の尹大統領のやり方も全く同じで新しさはなかった。

 また国内政治がうまくいかないのは国会で多数を占める野党が反対するからで、これを排除すれば自分が考える「理想の政治」ができると考え、力でそれを実行しようとした点も同じだ。
 さらに選挙で不正が行われたと訴えている点も独裁政権がよく使う手と変わりなかった。

民主主義を守った国民・軍・警察

 いずれも独裁政権・強権政治が執る方法だが、既視感を覚えた人も多いのではないだろうか。
 そう、ここ数年、こうした手法がある種の流行のように選挙の度に訴えられているのだ。それも民主主義を標榜している国々で。

 先便を付けたのはトランプ氏が4年前の選挙で破れた時。「選挙で不正が行われた」「本当は自分が勝っていた」と訴え、支持者に国会議事堂に向かうよう仕向けたのは記憶に新しいところだ。
 あの時、「議事堂を占拠しろ」という直接的な言葉は使われなかったが、彼の支持者達の中にはそう受け取り、実際に議事堂内への進出を試みた者さえいたではないか。

 尹大統領がそれに倣ったかどうかは分からないが、警察の部隊を国会に向かわせ「国会議員を逮捕しろ」と6度も電話で指示し、逮捕する政治家の名前もリストアップしていたというから、これはクーデター以外の何物でもない。

 幸いだったのは現場の軍隊、警察が尹大統領の指示を忠実に実行しなかったことと、国民が素早く反対行動を起こしたことで、それを見て尹大統領が翌朝に戒厳令撤回に追い込まれ、ギリギリのところで韓国の民主主義が守られた。

 しかし、これで終わりではなかった。14日午後4時からの国会決議で2回目の大統領弾劾案は可決されたが、尹大統領は辞任するどころか居直った。「国民と最後まで戦う」と。
 ここで彼が言う「国民」とは自身の支持者のことで、韓国国民のことではない。
                                       (2)に続く

#韓国非常戒厳


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