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ホモ・サピエンスは滅亡に向かっているのか〜環境編(4)
世界中で同時多発する熱波と豪雨


世界中で同時多発する熱波と豪雨

 世界各地で異常な熱波による干ばつ、水不足が問題になっているが、日本では熱波より集中豪雨による洪水被害の方が問題だろう。
 従来あまり耳にすることがなかった「線状降水帯」という言葉を耳にし出したのはここ数年だが、いまやこの言葉を見聞きしない日はないほどに日常化している。裏を返せば、それほど多発しているということであり、いまや線状降水帯の多発が洪水を引き起こす要因というのはほぼ共通認識になっている。

 一方で同時多発的な熱波があり、もう一方で線状降水帯の同時多発による洪水発生。この高温と豪雨という一見相反するように見える2つが実は同じ原因、地球温暖化によるものというのはトランプ前米大統領と彼の熱烈な支持者を除けば共通認識だろう。そしてそれをもたらしているのが北半球を流れる偏西風(ジェット気流)の蛇行ということも今や気象学の常識になっている。

 では、何が問題なのか。蛇行の大きさと、その状態が長く続いていることである。偏西風の北側と南側で高気圧と低気圧が形成されるというか、高気圧と低気圧の間を偏西風が流れているわけだが、流れが南北に少しズレれば(蛇行すれば)、今まで高気圧に覆われていた地域が低気圧に覆われるようになったり、その逆もある。
 ただ、強い高気圧や低気圧に覆われようと、それが短期間であれば熱波が発生しても短期間で終わるし、大洪水をもたらすほどの豪雨はそうそう起こらない。ところが高気圧、低気圧の位置が変わらず同じ場所に前線が停滞すれば気温はますます高温になり、低気圧に覆われた地域は雨が降り続くことになる。

 それにしてもなぜ、高気圧、低気圧の位置が固定化に近い形で同じ個所に長く留まるようになったのか。
 それには北極圏の気温上昇が関係している。北極の温暖化は他の地域に比べて2〜3倍の速さで進んでいると言われ、そのことが偏西風を不安定にし、大きく蛇行させている。
 また、北極の気温上昇により赤道近くとの気温差が従来より縮まっている。その結果、偏西風の速度が遅くなり、高気圧と低気圧が停滞する期間が長くなっているのだ。

 地球温暖化は北極の気温上昇を招き、北極の氷が解けて海に流れ落ち、海水面の上昇を招いているというのは、もう何年も前から指摘されていることだが、温暖化の影響は海水面の上昇だけにとどまらず、今夏、北半球で顕著に見られたように世界各地を熱波が同時多発的に襲い、同時多発的に線状降水帯が発生し、各地に豪雨被害を招いている。
 しかも、この状態が今夏だけで終わる保証はないどころか、今後も続く可能性が高いとも指摘されている。
 実のところ、この指摘は正しいのではと思える。特に今夏の雨の降り方が異常なのは多くの人が認めるところだろう。

 異常なのはまず天気が急変すること。次に長雨ではなく短時間豪雨、それもバケツやタライを引っ繰り返したようなという表現では足りない豪雨で、一瞬の内に水浸しにしてしまう集中豪雨の怖さ。
 個人的な経験で言えば、25分間の豪雨に今夏何度も襲われた。わずか50m先が見えない豪雨というのは恐怖でしかない。許容範囲を超えた雨量を雨樋は流すことが出来ず溢れさせ、あっという間に床下に浸水し出したし、排水溝の蓋を水が下から吹き上げる様も初めて自宅で目にした。幸い毎回30分程で小降りになってくれていたので助かっているが、これが1時間余りも続いていれば間違いなく周囲は川になっていただろう。
 晴れた日に土のう袋を買いに行き、並べて床下への浸水を防ぐべく簡易防水提を拵えてはみたが。

 ここまで目に見える形で温暖化現象が現れてくると温暖化を止めなければと多くの人が考えるに違いないし、考えなければこの星で生きる生物に未来はないだろう。
 しかしホモ・サピエンス・サピエンスに「地球環境」という巨大な怪物に立ち向かっていく覚悟があるだろうか。世界の政治、経済、社会の動きを見ていると、とてもその覚悟はないように見える。それが私の取り越し苦労であればいいが。


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