過剰生産こそが問題(2)
〜ショッピングモールの廃墟が米国で急増


ショッピングモールの廃墟が米国で急増

 モノは売れているのか、いないのか。安倍政権の掛け声にもかかわらず国内消費は一向に上向かない。中国人など外国旅行者による「爆買い」はあったものの、その恩恵を受けたのは都心のデパートなど一部に限られ、数字上は消費が伸びたように見えるが、一部の「爆買い」を除けば相変わらずの消費不況。
 「爆買い」ブームが終わってみれば前以上の売り上げ減だ。地方都市のデパートは閉鎖して、都心に集中する波がデパート業界を襲っている。
 大型ショッピングモールやGMS(大型総合量販店)の不振はいまに始まったことではなく10年近く前から言われてきたことだが、反転するどころかますます悪化。もはや大きいことはいいことどころか、悪いことと言った方がいい状態だ。

 問題はこうした動きが日本だけでなく先進国で起きていることだ。日本の小売業が見本にしてきたアメリカでは廃墟と化す大型ショッピングモールが続出している。これではトランプ大統領ならずとも国内生産で雇用を守れ、と叫びたくもなるだろう。
 雇用が増え、失業率が下がれば消費が上向く。そうなれば再び大型ショッピングモールにも人が戻ってくる。
 こんな教科書通りにことが運ぶわけはない。では、何が問題か、問題はどこにあるのか。

 現在の先進国は過食症に陥っている状態と言っていい。ガツガツ食べて成長してきたが、気が付けば高カロリー食の摂り過ぎで体重、脂肪分、コレステロール値は全て上がり、カロリー摂取を控えるよう医師から通告される始末。それでも健康維持のために摂取量を減らそうとはせず、代わりにサプリメントで調整しようとしている・・・。そんな状況が目に浮かぶ。

 アメリカでなぜ大型ショッピングモールがゴーストタウン化しているのか。それは消費者がモノを買わなくなったからというのは自明の理だ。
 では、なぜモノを買わなくなったのか。すでに必要分を通り越し、十分すぎるモノを所持しているのが一つ。もう一つは必要品以外のモノを買えるカネがないからである。
 要は需要がないか激減しているのに供給を続けているわけだ。モノが売れないのは当たり前だろう。それでもいままでは目先を変え、無理矢理でも口を開けさせて食べさせることができていた。しかし、それも限界になってきたということだ。
 この過程をさらに速いスピードで進んでいるのが中国で、大型ショッピングモールは売り場に商品を並べられる前から廃墟と化している。廃墟をつくるために建設していると言った方が正しいかもしれない。

「撒き餌」が撒き餌にならず

 さて、もう一度ニコンの現状に戻ろう。スマホの普及とスマホのカメラ性能アップでコンデジが売れなくなったことに関しては過去にも何度か触れた。
 スマホに搭載されているカメラの画素数はいまや1,000万画素越えが当たり前になっている。カメラの写りは画素数だけで決まるわけではないが、写りの良し悪しを決める要素の一つであることは確かだ。
 そして画素数がここまでアップすればコンデジでなくてもスマホで充分ということになる。実際、Lサイズ程度にプリントしたり、ブログ、SNSへアップして写真を見る分にはスマホとカメラ撮影の写真はほとんど区別がつかない。

 しかし、ニコンの落ち込みはコンデジだけではない。レンズ交換式カメラ(デジタル一眼レフカメラ、ミラーレスカメラ)でも見られるのだ。レンズ交換式カメラは入門機を除くと趣味性が高くなるから市場はある程度安定していると言っていい。にもかかわらず、この市場で売り上げが減少しているのは深刻だ。
 では他社はどうなのかと言えば、この市場で売り上げを伸ばしたのはソニーだけ。他は押し並べて減少か横這いに近い状態である。
 つまりレンズ交換式カメラ市場そのものも減少傾向にあるが、その中でもニコンの落ち込みが激しいと言える。

 ニコンが抱えている問題は日本の、というか先進諸国の製造業がすべからく直面している問題でもある。そしてそのことは2012年11月16日配信の「栗野的視点(No.429):日本の製造業はなぜ衰退したのか」でも指摘したが、再度見てみよう。

 コンデジが利幅の薄い薄利多売市場なのに対し、レンズ交換式カメラ市場は利益を出せる市場である。
 理由は単価が高いことと、価格より性能を求めるユーザーが多いから値引きをしなくても売れるし、発売後の値下がり幅も小さい。またカメラ本体だけでなく交換レンズが売れる。
 俗に「レンズ沼」にはまると言われるように、中級機以上を買うと標準レンズだけでは飽き足らず交換レンズが数本欲しくなる。ところが、これが結構高い上に値引き販売もほとんどない。メーカーにしてみれば「おいしい市場」といえる。対して入門機は中級機へステップアップを誘う「撒き餌」である。

 レンズ交換式カメラ(ニコンの場合はデジタル一眼レフカメラとほとんど同意義だが)市場で売り上げが落ちたということは、この中級機市場で落としたということになるが、なぜなのか。
 いくつかの理由があるが、その一つに「撒き餌」の存在がある。
言うまでもないが、「撒き餌」とはちょっと餌を撒いて魚を集め、捕る手段であって、餌を撒くことが目的ではない。

 ところが、ニコンもキャノンも入門機の性能をどんどん上げていった。それどころか、上のクラスと同じセンサーか、場合によっては上のクラスに搭載するより早く最新のセンサーを入門機に搭載するものだから、入門機からステップアップしないユーザーが増えてきたのだ。
 性能的に見劣りせず、価格が安ければ誰だってそちらを買うだろう。その上、ボディーとセットの標準レンズもいいとくれば、もうその段階で満足し、大きく重く価格も高い中級機を買う必要はほとんどなくなる。その影響を最も受けたのがニコンだったというわけだ。
 状況はキャノンも同じだが、同社の場合はKissシリーズが入門機市場でのシェアも高いし、よく売れているところにもってきて、この機会に一気にシェア拡大を目指し欧米市場でニコンに対する販売攻勢をかけている。またカメラ専業に近いニコンとは違い、キャノンは総合力でカメラの落ち込みをカバーしている面もある。
                                               (3)に続く

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