公共交通について考える〜地方を切り捨てるJR(1)
JR西日本、赤字路線名を発表


栗野的視点(No.766)                   2022年5月23日
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公共交通について考える〜地方を切り捨てるJR
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 4月11日、地方に衝撃と戸惑いが走った。この日、JR西日本が不採算17路線の収支を「ローカル線に関する課題認識と情報開示について」の中で具体的に発表したからだ。
 JR西日本は「路線廃止ありきという話ではない」とは言うものの「利用者数が極端に少ない」「赤字路線」を発表されれば、明日、明後日の路線廃止はないにしても、近々路線廃止になると受け取るのは沿線自治体ならずとも当然だろう。

JR西日本、赤字路線名を発表

 JR西日本がローカル路線の「見直し」に言及したのは突然ではない。2月16日、長谷川一明社長が会見で「ローカル線に関する課題認識」について触れており、4月の発表内容はほぼそれに沿ったものだ。
 「見直し」の標的にされたのは17路線30区間で、それらは山陰・中国地方北部に集中している。1日の利用者数が2,000人未満の赤字路線の中でも最も採算性が悪いと槍玉に上がったのが芸備(げいび)線。

 芸備線といっても鉄道ファンか、その地域に関係ある人以外には地理的なイメージすら湧かないかもしれないが、名前からある程度は想像つくだろう。「芸」は「安芸(あき)」あるいは「芸州」の「芸」で広島地方を指す古い呼び名(旧国名)。「備」は岡山県西部を指す備中。つまり芸備線は広島市と岡山県新見市の備中神代(びっちゅうこうじろ)駅を結ぶ路線のことである。

 芸備線の中でも採算性が最も悪いと指摘されたのが東城駅(岡山県)と備後落合駅(広島県)間で、輸送密度はわずか11人。
 輸送密度とは1kmあたりの1日の平均乗客数を示す指標で、乗客数などの数値を営業日数などで割って算出した数値だが、旧国鉄時代に4,000人未満の区間はバスへの転換が経営上効率的で、2,000人未満は実質的な廃止基準とされたことを考えると11人という数字はあまりにも悪い。ほとんど利用されていないと言っても過言ではない。
 因みに東城ー備後落合間は100円の収益を得るのにかかる経費が2万5416円と算出されている。

 こうした数字を提示されれば沿線自治体、沿線住民ですら「廃止やむなし」と考えるに違いない。いや、それより前から「いずれ路線廃止になる」という諦めの気持ちがあっただろう。
 とにかく芸備線の利用者数は少ない。2,000人未満どころか100人にも満たない。備後落合駅ー備後庄原駅間は62人、備中神代ー東城駅間が81人だ。
 これを見ればJR西日本に同情したくなるかもしれない。よくぞまあ列車を走らせてくれている。さすが公共交通の役割とは何なのかを理解している。なんとか利用者を増やすように協力したい、と思うかもしれない。

芸備線の利用者数が少ない理由

 それにしてもなぜ芸備線の利用者はここまで少ないのか。地方、特に山間部の少子高齢化、過疎化は加速しているが、それはなにも芸備線沿線に限ったことではない。にもかかわらず、なぜ芸備線のみ利用者数が極端に減少しているのか。
 個人的には中国自動車道を年に何回も走っている感覚からすれば広島県庄原ー東城は近距離的なイメージだが、この間をJRで移動すると結構時間がかかる。高速道路に対し鉄路は北の方に大きく迂回した路線になるから想像以上に時間を要する。

 東城ー備後庄原間は高速バスを利用すれば30分あまりだが、鉄道だと1時間40分もかかる。余程途中の備後落合にでも寄る必要がなければ高速バスの方を利用するはず。しかも鉄道は高速バスに比べて圧倒的に運行本数が少ない。時間が短く、運行本数が多い方を選ぶのは当然だ。
 このことからJR芸備線の利用者数が少ないのは少子高齢化や過疎化だけが原因ではないと分かるだろう。

 かといって今更、東城ー備後庄原間に新路線を敷けといっても、それは予算的にも経営的にも無理だろう。結局、芸備線の廃止は規定事実であり、社内ではスケジュール化されているはずで、そのことを関係自治体に明らかにしたというのが今回の発表。事実、JR西日本は「廃止ありきという話ではない」と言いながら、その一方で「路線存続が前提(の話)ではない」と認めている。

 上記のような状態を聞けば、不採算17路線30区間の廃止はやむを得ない、と考えるかもしれない。しかし、どうも腑に落ちない。餅が胸の辺りでつかえて苦しく、コブシで胸を叩くがストンと胃に落ちて行かない。

 理由はいくつかある。まずJR各社の努力不足だ。

 地方路線→赤字→運行本数削減→利便性低下→利用者数減少→運行本数のさらなる削減→ますます利便性低下→赤字の拡大
 という負のスパイラルに陥っている。その間に大した手は打っていない。JR各社は「努力している」と言うかもしれないが、どのような手を打ってきたのか時系列に提示すべきだろう。でなければ「努力してきた」という弁明は通じない。
                             (2)に続く


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