「コロナ」が変えた社会(W)
〜貧困層が増え、社会的格差がさらに拡大(2)」

〜62人の大富豪が36億人分と同額の資産を保有


62人が36億人分の資産を所有

 話を元に戻そう。
 かつての階層分化は固定化され階級に変じているにも拘わらず、それを未だ「階層」だと信じているお人好しにされてしまった国民。本来、権力に向かうべき刃は「刀狩り」以降すっかり牙を抜かれて従順な飼い犬に成り下がり、せいぜいネットで「リア充」を発信する程度である。
 ネットという仮想世界で現実生活を「リアルは充実」と発信すること自体が奇妙だが、ネットは「幻想社会(バーチャル)」と彼女達は知っているからだろう。束の間の夢の世界であり、現実とは違う仮想社会(バーチャル)だからこそ演じられる世界であり、そこで現実(リアル)に感じている様々な不都合、不平等、不誠実、差別等をなかったことにしている。
 「夢見るシンデレラ」は悪いことではない。ただ、それが権力者によってうまく利用されていることも知っておく必要があるだろう。

 アメリカでは人口の1%の富裕層が富を独占し、経済も政治も動かしているばかりか、「世界のトップ62人の大富豪が全人類の下位半分、すなわち36億人と同額の資産を持っている」(国際貧困支援NGO「オックスファム」による報告、2016年)という現実を見れば、かつての封建時代より貧富の格差ははるかに大きくなっていることに気付くだろう。

 問題は格差があることではなく、格差が拡大し、なおかつ固定化(階級化)していることである。貧しい者は一層貧しくなり、人口の1%程度を占める富める者はますます富み、富だけでなく権力も掌中にしていく構造が出来上がっているにも拘らず、その現実から目を逸らされている。
 富める者は富を1代で築こうが、親から譲り受けたものであろうが、その富で幼稚園・小学校から有名校に入学でき、有名中高一貫校に進むか、有名進学校に入学し、家庭教師を付けたり有名塾に通って一流大学に入学し、官僚になるか政治家、あるいは一流企業に就職する。
 早い話が日本の政治、経済をリードする地位に彼らが着いているわけだ。このことは取りも直さず、親の財産の過多で子の将来は決まっているということであり、日本も階級社会になってきたことを意味している。

 一方、貧しい者は高校時代から学費稼ぎのためにアルバイトをし、大学に入学しても学費と生活費のためにアルバイト生活を余儀なくされる。言い換えれば、勉強したくても勉強に割く時間がない。学費と生活費を稼ぐためにアルバイトをしなければ生きることさえままならないのだ。
 彼・彼女達の何パーセントかは生きるために学業を諦めざるを得ない者も出て来る。なんとか卒業できたとしても、そんな環境で優秀な成績を残せる人間は極めて稀だろう。
 一見、「よーいドン」で走り出しているように装われているが、実はスタート時点から差を付けられている。これは競争でも何でもない。勝つ者は最初から分かっている。それが今の格差社会の現実である。
                                           (3)に続く

PREMOA(プレモア)


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