未収金額で医師1人雇える
病院の未収金対策なのだ。
前回、赤字の国公立大が90%に上ると書いたが、病院経営を苦しめているもう一つの要因に未収金がある。
厚生労働省の調査によれば2021年10月、11月の1医療機関で未収患者数は52人、59人を数え、その平均未収金額は102万7000円、119万9000円。これを年間で計算すれば約1,326万円の未収金額が発生していることになる。
なぜ未収金が発生するのか。たまたまその時に持ち合わせがなかった、通帳、印鑑やキャッシュカードを持ってなくて病院内のATMから現金を下ろせなかったなど様々な要因があるだろうが、1つには貧困世帯、健康保険証を持たない外国人、単身者、高齢単身者の増加といった社会的要因もある。
しかも今後、高齢単身者は増えることはあっても減ることはないし、外国人や貧困世帯も現在の社会経済状況を考えれば改善には向かいそうにないから病院の未収金額が減ることはないだろう。
ところで、厚生労働省の「第23回医療経済実態調査(2021年実施)」によれば病院勤務医の平均年収は約1,467万円。20代、30代の勤務医ならこの数字より少ないから、未収金額がなければ医師1人を雇用できる計算になる。
これは国公立病院にとっては大きい。金額もさることながら、回収の手間暇を考えれば、そのコストが余計に経営を圧迫する。なんとかしたいと考えるのは無理からぬ話だし、厚生労働省もなんとかしろとアドバイスもしている。
その1つがクレジットカード払いの導入や病院内へのATM設置。しかし、それで解決ともならない。
そこで現れたのが代行会社で、福岡市内でも大きな病院はこうした代行会社制を導入しているところが多いが、この制度、一見よさそうに見えるが問題はないのか。
リスクはないのか保証人代行
昨年、大学病院で手術・入院した友人に代行会社のことを尋ねると、事業資金を借りる時に保証会社を付けるように言われるのと同じようなものではないかと思っている、と言っていた。
言われてみればそうかもしれない。
しかし個人的には相手のことをよく知らない会社が保証人になると言われ、そこに個人情報を把握されることに不安を感じ、入院前に病院に電話をして、「絶対に保証会社経由でないとだめなのか。保証人はいるので、できれば訳の分からない会社を保証人にしたくはない」と告げると、「保証人がいる人はそちらを記入してもらえばいいです」と言われたので、保証会社の書類は破棄した。
確かに単身者、特に高齢単身者にとって保証人を探すのは大変で、入院を諦める人もいるかもしれず、そういう人にとっては便利な制度ではある。
ただ便利さの裏には問題もあるのが常。後程、入院時の保証会社について調べてみると、不動産関係から始めた保証会社が大半のようだ。賃貸住宅に入居する際の保証人代行でこれは結構以前からあるが、その業界が医療分野も手掛け始めたのだ。
未収金で悩まされていた病院には渡りに船かもしれないが、業者によっては評判のよくないところもあるようで、取り立てが厳しいとか、なかには騙されたという悪評のところもあるようだから注意しなければならない。
といっても病院が複数の代行会社と契約しているわけではないから代行会社を選べはしないのだが。
こう考えると歳を取っていっても「おひとり様は気楽」と言えるかどうか。なんとも生き難い時代になったものだ。
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