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行き過ぎたグローバル化と自由貿易が貧困を招く(1)
〜自由貿易か保護貿易主義か


 2017年はトランプ米大統領の登場で世界政治は大きく変わるだろう。イタリア、オーストリアはすでにその洗礼を受け、イタリアのレンツィ首相が辞任表明し、オーストリアはリベラル派が大統領選で勝利したとはいえ右翼ポピュリストの伸長を許した。民主主義の旗手フランスでさえ極右政党・国民戦線が大きく伸長し、オランド大統領は来春の次期大統領選への出馬を辞退。現職大統領が2期目を目指さず辞退というのは異例だ。直接的な要因は支持率の低迷だが、その背景にあるのは失業問題である。EU各国も米国も喫緊の課題は国内の失業対策であり、それが政治を大きく変えようとしている。

広がる「トランプ現象」

 いわゆる「トランプ現象」が世界各国に広がる気配を見せているが、それを「ポピュリズム=大衆迎合主義」という捉え方だけでいいのだろうか。
 ポピュリズムとはラテン語の「populus」に由来し、エリートに対する民衆、人民を指す。故に民衆の意見を代弁することは政治としては正しい立場であろう。にもかかわらず昨今、ポピュリズムが揶揄されるのは人気取り的に民衆の意見に「迎合」しているという意味合いで使われているからである。
 民衆の意見に迎合することは間違いなのか。答えはノーだ。それは決して悪いことではない。ただ、ややもすると理念、大極を見失い、目先に走り、対立軸を作り、激しい言葉で人々を煽り、社会を分断させようとする。
 こうした手法は現状に不満を抱えている層に支持されやすく、彼らの不満を煽り、政治的に利用しようとする輩が現れてくる。ヒトラーもその代表的な一人だが、いま欧米でこうした指導者達が台頭してきている。

 彼らに共通しているのはトランプ米国次期大統領に代表されるように対外的には強硬なタカ派だが、政治は内向きで自国第一主義をとることである。それは貿易面では自由貿易ではなく保護貿易を主張し、移民・難民の流入を拒否し自国労働者保護に動く。
 戦後、このように主張する政権や政党が支持を集めることがなかっただけにトランプ米国大統領の出現に世界が驚きを持って迎えているが、果たしてトランプ氏の主張はそれほど奇妙なことだろうか。
 以下、彼の言動の元になっているものをいくつかの角度から見ていこう。

自由貿易か保護貿易主義か

 まずトランプ氏が大統領になって最初に実行すると明言していることにTPP(環太平洋パートナーシップ協定)離脱がある。TPP離脱はヒラリー・クリントン氏も唱えていたから、仮に彼女が大統領になっていたとしても米国がTPP離脱に舵を切るのはほぼ間違いないことであり、それは今まで進めてきた自由貿易政策を見直すということにも繋がる。
 私は以前から日本のTPP参加に反対しているが、そのことは別にしても米国のTPP離脱は米国にとって正しい選択だと考えている。それどころか自由貿易そのものについて世界は再考すべき時に来ているとさえ考えている。TPPを「第2の開国」などと言ったバカな元首相もいたが、それはとんでもない間違いで、米国はそのことに気付いたということだ。

 TPPは元々シンガポール、ブルネイ、チリ、ニュージーランドの4か国の経済連携協定として出発した。この時点では小国間の貿易協定であり、均衡が取れているといえる。ところが2010年に米国、オーストラリア、ベトナム、ペルーの4か国を加えた拡大交渉が開始された頃から性格を異にしだした。米国という巨大市場が出現したわけで、参加各国にとっては米国への輸出を増やすチャンスと映った。
 それはそうだろう。かけられていた高い関税のために米国市場で思うように売り上げ数字が伸びなかったが、関税が撤廃(全商品ではないにしても)、もしくは下がれば、その分販売価格を下げることができる。競争力が上がると考えるのは当然かもしれない。
 同床異夢で、参加国それぞれに思惑を持ちながら自分達に都合のいい解釈でTPPを捉えていた。それは米国も同じで、自国製品を参加各国により多く売るチャンスと捉えた。恐らく第2次世界大戦直後の米国を夢見たのかもしれない。
 しかし、当時と現在では米国の事情が大きく変わっている。当時の米国は生産国だったが、現在の米国は消費大国。輸出より輸入の方がはるかに多い輸入超過国に陥っているのだ。
 貿易赤字であるが故にTPPを輸出を増やすチャンスと捉えたのだろうが、今の米国は国内に製造業がない消費国であり、米国民はローン付けになりながらもひたすら消費を続ける消費病にかかっている。これでは相手国市場で米国製品を売るどころか、自国市場をさらに開放するだけの存在でしかない。
 米国にとって必要なのは開国どころか鎖国だろう。それが現実的に可能かどうかは別にして。

 トランプ氏は乱暴な言葉遣いながら、そのことに気付いただけでなく、政策的にそれを実行しようとしている。
 実はEUなど成熟国家も多かれ少なかれ米国と似たような状態に陥っている。これらの国々で極右勢力や右翼ポピュリストと呼ばれる勢力が台頭してきたのはこうしたことが背景になっている。
                                                (2)に続く



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