崩壊していくニッポン1
〜偽装列島(3)〜


消費者のブランド信仰が偽装を

 不思議なのは、こうした偽装表示があっても消費者が気付けば偽装はなくなる(なくなりはしないだろうが、それでも激減する)はずなのに、業界あげて、あるいは業種を問わず偽装が長年続いていたということだ。
 消費者が気付かなかったということが1点。もう1点は消費者のブランド信仰があるからだろう。
 とにかく高価な物ほどありがたがる人は結構いる。「安くて、いいもの」ではなく、高価なもの=いいもの、という考えに支配されている人だ。こういう人はブランドに弱く、ブランドをありがたがる傾向がある。
 「伊勢エビだから、おいしい」「松阪牛だから、おいしい」と言う。前提の「だから」を取って自分の舌で評価できない。といえば言い過ぎだと怒るだろうか。それなら「車エビ」をブラックタイガーだと見破れなかったのはなぜなのか。

 食材偽装を最初から堂々とやっていたところは少ないはず。特に有名ホテル・旅館・レストランともなればあまりにもリスクが高すぎる。にもかかわらず、偽装表示を続けてきたのはコスト削減圧力に負けたのと、消費者に気付かれなかったからだ。
 まあ早い話、客がなめられたということだ。グルメを自称する客さえ騙せ通せたのだから、それ以外の客を騙すのは簡単だったに違いない。こういう詐欺行為は一度味を占めるとやめられないものだ。
 例えば宮崎のリゾート施設シーガイアでは2011年に食材の偽装表示が明らかになり宮崎県から改善を指示されていたにも関わらず、今回も牛脂を注入した加工肉を「牛肉のステーキ」と表示するなどしていた。こうした大型施設やホテルチェーンの食材偽装が怖いのは施設内の1箇所ではなく複数箇所で同じように偽装が行われていることだ。

「安い店なら許せるというわけではないけど、一流ホテルやデパートが偽装するのは許せない。よそより高くても、そのホテルやデパートのブランドを信用して食べているのに、それを安い食材を使っていたというのは二重に騙された気になる」
 こう怒る声は至極もっとも、まともである。消費者はもっと怒らないといけない。それと同時にもっと賢くなるべきだろう。うわべやブランドに騙されることなく。

 まず、あまりにも安すぎるものは注意が必要だ。例えば日本酒。私は家では純米酒しか飲まないことにしているが、純米酒でも最近は精米度数70%のものが出回っている。もちろんその分安いわけだが、品質は大丈夫かと思ってしまう。一応、国産米を謳ってはいるが。
 ところが、大手酒造メーカーの純米酒が実は醸造用アルコール入りだったことが、つい最近発覚した。醸造用アルコールを入れれば本醸造と表示しなければならない。
 かと思えば、精米度数49%の純米吟醸酒720mlビンがディスカウント店で1000円を切る価格で売られている。49%精米というのは51%は研ぎ捨てているということだから、高くなっても当たり前。なのに、逆に安過ぎると、「企業努力」という言葉だけでは信用できない。他に何かあるのでは、とつい勘ぐってしまう。
 まあ、そんなことを考えていると、回転寿司屋でイクラは食べられなくなるし、リーズナブルな価格で食べられるものがなくなってしまいそうだが。

 この騒動、どこで幕を引くのか、どこまで追求するのか、難しいところがある。というのも、食材に限らずあらゆる分野で、ごく普通に偽装が行われているからだ。
 しかし、絶対に許せないのが成型肉の偽装表示だ。アレルギー物質が含まれているのに無表示だと、命に関わることがある。もはや社内のモラル教育ぐらいでは直らないだろう。まず経営陣の経営姿勢、経済優先の姿勢から正す必要がある。そして残念ながら罰則規定を設けて取り締まるしかないかもしれない。
 それにしても、この国のグローバル化は進んだものだ。いまや犯罪のレベルはアメリカ並みだし、偽装は中国といい勝負になってきた。
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