崩壊していくニッポン1
〜偽装列島(1)〜


 かつてニッポンは安全・安心の住みやすい国だった。ことさら「オ・モ・テ・ナ・シ」などと言わなくても、それが当たり前の社会だった。商品は正札で販売され、チップを払わなくても誰もが均一の、質のいいサービスを受けられ、中身の誤魔化しなどなかった。
 それがいつの頃からか変わってきた。思うにバブル期以降ではないだろうか。その頃から人々が拝金主義に走り、自分さえよければという利己主義に大きく傾いていった。結果、理由なき無差別殺人や、目先の金品欲しさの衝動的殺人、自らの欲望を満たすためだけの誘拐、強姦、殺人等々が増え、安全・安心できる社会ではなくなってきた。
 そして次から次に明らかになっていく偽装。もはや新興国の偽装表示を笑えない状況が、この国で起きているのだ。なぜなのか。なぜそうなったのか。真犯人は誰なのかを探ってみたい。

JAS法改正後も悪しき慣習

 食材偽装表示で驚いたのは次から次に連日のように名乗り出る会社の多いこと。よくもまあこれだけ、と呆れてしまう。有名デパートがほぼ軒並み名前を連ねていることもあるが、あらゆる業界に広がっていることにも驚く。まさに「偽装列島」の様相を呈している。
 「皆で渡れば怖くない」とばかりに、この機会に名乗り出て、自社への風当たりを少しでも和らげようという魂胆も見え隠れするが、それでもまだ名乗り出る企業は多少なりともまともで、まだまだ名乗り出てないところがあるのではないかと勘ぐってしまう。いや、中小に至ってはこっそりと食材の表示名を変更している所もある。実際、「芝エビ」の偽装表示問題発覚後、近くのスーパーでは「バナメイエビ」という表示に変わっていた。

 私は、今回の食材偽装表示が発覚した時、それ程驚きはしなかった。まあ、その程度のことはあるだろうと多少鷹揚に構えていたというか、偽装表示を許すわけではないが、ありうることを認めていたからだ。
 というと、お叱りを受けそうだが、食材の偽装表示は昔から行われていた。もちろん、過去そうだったから今も許されるわけでは断じてないが、なぜ、いままでそのことに気付かなかったのか、報道されなかったのかの方に疑問を感じる。
 いや、いままでだって報道されていたが、それらは個別事案で終わっており、まさかここまで大がかりに、と思わなかっただろう。

 偽装表示と言えば、直近では熊本産馬刺しの産地偽装を思い出す人も多いだろう。
熊本産と言っても熊本で子馬の頃から育った馬は少なく、多くは生育馬をかつては中国、オーストリアから、最近はカナダから輸入し、熊本で2〜3カ月飼育したものが多い。かつてはこれらも国産、熊本産の名称で販売されていたが、平成21年にJAS法が改正され、原産国を表示するように義務付けられた。
 ただし、ここで表示される産地は最も長期間飼育された国名(例えば中国産、オーストリア産、カナダ産等)なので、国内での飼育期間の方が長ければ「国産」と表示できる。
 では、上記例のようにカナダから生育馬を輸入し、熊本で2〜3カ月飼育した後に馬刺しとして市場に出す場合はというと、「原産地カナダ、最終肥育地熊本県」という表示になる。
 ただし、生育馬を生きたまま輸入することが前提で、カナダで解体処理した肉を輸入し、「原産地カナダ、最終肥育地熊本県」と表示すれば不法であり、罰せられる。
 早い話が平成21年のJAS法改正までは国内で2〜3カ月飼育し、「国産」と表示したものが市場に出回っていたということだ。

 上記は馬刺しの例だが、他の食材でも同じだ。今回の食材偽装表示が大体10年前から行われていたということから考えれば、JAS法改正後もそれ以前の「慣習」をそのまま続けていたともいえる。
 とすれば、現場にコンプライアンス(遵法精神)がなかったことになる。しかも1社や2社ではなく、いわば食に関する業界で幅広く行われていたことを見ると、業界の現場には遵法精神はなく、古くから続いている悪しき慣習に支配されているといえる。
 ここを変えない限り、今後も似たようなことは起こりうるだろう。
                                               (2)に続く


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