三流だった技術、企業、政治
「IHI、お前もか」、それとも「IHI、またか」と言うべきか。もう、これほど次から次へと不正、誤魔化し、不良工事が明らかになってくると呆れてものが言えない。というか、つくづくこの国は3流だったのだと思ってしまう。
IHI、私には石川島播磨重工業という名称の方が馴染みがあるし、93年当時、同社の社長であり、日本商工会議所会頭でもあった稲葉興作氏にインタビューした時のことを思い出すが、そのIHIの100%子会社、IHI原動機が製造する船舶・陸上向けエンジンの燃料消費率のデータを改竄していたという不正が4月に発覚した。
数値の修正が特に大きかったのが船舶用エンジンで出荷台数の実に9割近くに当たるというから開いた口が塞がらない。
IHIの不正は今回が初めてではない。それ以前の5年前にも発覚している。その時は航空機エンジンの整備事業で無資格者が検査をしたり、検査書類を誤魔化していたりと自動車業界と全く同じ内容だ。
IHIとIHI原動機は別会社とはいえ同じグループ会社である。5年前の反省がグループ内で共有されていなかったわけだが、同社の不正はこの2度だけではないから驚く。そしてこういう場合に必ず言われるのが「現時点で安全性への重大な問題はない」だ。
自動車業界でも不正、誤魔化しが発覚する度に同じ言葉が繰り返し発せられ、今後の対策は「コンプライアンス意識の徹底」と「意識改革」に努めると言う謝罪の言葉である。
意識改革はもちろん大切だが、それ以上に必要なのは社内の体制改革ではないか。
日本企業が変質しだしたのは「コスト」が強調され出してからだろう。特に20年余り前からサービス、メンテナンスなど売り上げに直接、大きく貢献しない部署の人員を削減、あるいは部署そのものの廃止、外部委託を進め、その部分のコストをカットしてきた。
今まで見てきた自動車メーカーや建設・土木業界でも一様に検査部門の人員を減らしている。「最終検査は形だけ」という認識が共有されているのだろう。だから有資格者が行わなければいけない検査を資格を持っていない人間にさせ、書類作成時の印も勝手に押す。
長年こうしたやり方で行ってきているから、それが当たり前という認識が組織内で共有されている。ダイハツ工業の不正は確認できるだけでも20年前から、IHIに至っては40年前から半ば公然と行われてきた。
要は安全性に関わる部分を縮小、切り捨ててきたわけで、これはモノづくり企業だけでなく全産業、全企業で行われている。どこもかしこも、誰も彼もが近視眼的になり、目先の利益しか考えなくなってきている。
だから、ちょっとぐらいのズレや違いは許容範囲内で安全を脅かすものではないから修正の必要なし、と誤魔化していく。
もはやこの国は経済も技術も政治も三流。にもかかわらず、相変わらず「メードインジャパンは安全、高品質」という幻想に捕らわれている。いや、そうした幻想が上手に利用されている、と言った方がいいだろう。
そのことを我々は認識しなければならないし、現実を真摯に受け止め、モノづくりの基本に立ち戻らなければ、この国の再生はないだろう。
庶民は物価高に喘いでいるが、トヨタや金融機関その他は過去最高益を記録なんてどこかおかしい。そう憤るのは私だけか。
(完)
#IHIの不正 #自動車産業の不正
|