壊れていく日本社会(4)肉の消費にも所得格差が表れている


肉の消費にも所得格差が表れている

 すでに見たように「蛙の子は蛙の子」ではないが親の収入が子供の教育、就職、その後の生活までを左右するようになってきた。
 それなのに社会はデフレ脱却が旗印になり、円安が進み、輸入品は高くなる一方。
 輸入に頼っている「輸入大国ニッポン」は円安が進めば食料品を含め物価はどんどん値上がりし、庶民の生活は厳しくなる一方。
 鶏、豚、牛のエサは国産ではなく輸入に頼っているため飼育費の高騰は避けられず、卵も肉も牛乳も値上がりし庶民の台所を圧迫している。
 趣味嗜好品は買い控えをしても食料品はそういうわけにいかず、食費を抑えるため少しでも安いスーパー等を探して買うという努力を強いられている。

「パンがなければブリオッシュ(ケーキやクロワッサンの類)を食べればいいじゃないの」と言ったのはマリー・アントワネット(と伝えられているが実際には違うらしい)だが、ご飯がなければ麺かパンを食べればいいというわけにもいかない。
 かつて庶民の食べ物だったラーメンはいまや1,000円超の食べ物になっているし、海鮮丼は数千円という時代。
 いずれも庶民対象の食べ物ではなく、外国人観光客をターゲットにしているが、それらは円安だからで、円高に振れだすと外国人の「日本買い」は減少する。
 その時これらの店は生き残っているだろうか。

 随分前から外需ではなく内需を高める必要があると言われてきたが、いまだに外需頼みオンリーで、宿泊施設なども外国観光客や富裕層を相手にした1棟貸しが地方でも増えている。
 これでは庶民は旅行もできない。

 外需頼みの経済は長続きしないしリスクもある。
にもかかわらず外需頼みと一部富裕層を対象にした経済を続けるメリットはあるのか。
 それは一部富裕層と大企業向けの経済政策で、今や圧倒的多数になっている中・低所得層を切り捨てる政策以外の何物でもない。

 では庶民はどのように生活防衛を送っているのか。
そのことは肉類の消費にはっきり表れている。
総務省の「家計調査」によれば、令和6年(2024年)の食肉購入数量は牛肉が1人当たり1,930g、豚肉7,573g、鶏肉6,462gとなっている。
 前年比で見ると牛肉は4.7%減で豚肉も0.5%減である。対して鶏肉は4.3%増えている。
 つまり高い牛肉の消費量は減り、牛肉に変わって豚肉を購入していた人達も、さらに安い鶏肉に流れた結果、鶏肉の消費量が増えていることが見て取れる。
 賃金のアップが物価のアップに追い付いていないわけで、消費者の節約志向は進んでいることが分かる。

 では所得による違いまであるのかどうか。
同「家計調査」をさらに見ていくと、2023年実績では年収880万円以上の高所得世帯が年間に購入する牛肉量は6.2kgなのに対し、年収213万円未満の低所得世帯の購入量は4.8kgである。

 海外では「ワギュウ」が人気で、訪日外国人は「ワギュウ」を喜んで食べている一方、日本の消費者は富裕層を除き、価格の安い鶏肉にシフトしていることが見て取れ、食の分野でも格差がはっきりと表れている。
                                        (5)に続く


(著作権法に基づき、一切の無断引用・転載を禁止します)

トップページに戻る 栗野的視点24 INDEXに戻る

ソースネクスト

ソースネクスト

ソースネクスト