「COVID-19」関係の報道に感じるいくつかの疑問 Part2(1)
〜なぜスペイン風邪と比較するのか


栗野的視点(No.683)                   2020年5月6日
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「COVID-19」関係の報道に感じるいくつかの疑問 Part2
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 TVをつければ朝から夜まで「コロナ」「コロナ」の大合唱。外出自粛を余儀なくされた身には勢いTVを見る時間が増えるが、どこのチャンネルでも似たり寄ったりの内容で、そんな状態を1か月も続ければ自ずと結果は見えてくる。気が付いた時には疑うことを一切しない、ある種「洗脳」状態に陥っている。
 かつて声高に反戦や反原発を叫んだ者達も相手がウイルスとなると、「人類の危機」とばかりに、かつて歌っていた抵抗歌の代わりに「欲しがりません、勝つまでは」の大合唱。

 いまや皆が一つ方向に向かい、突き進む不気味さ。そして紙メディアも電波メディアも、それを後押しするように「緊急事態宣言」を出すのが遅い、早く出せと、これまた大合唱。
 ところが最初の「約束」の1か月が近づき、さらに「1か月延長」と言われれば、今度は掌を反すように「出口戦略が見えない」「一体いつまで我慢すればいいのか」と言い出す。
 いや、確かにその通り。メディアで言っていることが間違っていると言っているわけではない。実のところ、こちらだってもういい加減うんざりしている。家に閉じ籠もっていれば楽しみは食べることと飲むことぐらい。その結果、お腹周りが多少大きくなりだすし、酒量も増してくる。
 これで肥満、高血圧、アル中気味になり、その上ストレスまでが重なれば「新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)」の格好の餌食になるかも。これでは何のための「巣籠もり」か分かりゃしないというものだ。

 まあ、それはさておき、本メルマガNo.682で「COVID-19」報道に関して感じる疑問点をいくつか挙げたが、今回もいくつかの疑問を追加・提示してみたい。

1.なぜスペイン風邪と比較するのか

 今回のCOVID-19を語る時、よく引き合いに出されるのが「スペイン風邪」だ。SARS(重症急性呼吸器症候群)でもMERS(中東呼吸器症候群)でも、ましてや香港風邪でもなく、100年前に大流行したスペイン風邪なのはなぜなのか。因みにSARSが流行ったのは2003年でMERSは2012年。対して香港風邪は1969年。
 こうした場合、まず同類を調べ、比較検討するか、次に似た条件下で起きたものと比較検討するのが一般的だ。前者ではウイルス名に同じSARSが付いた2003年の大流行、今流行りの「パンデミック」と言ってもいいが、が最も妥当だろう。

 では、なぜスペイン風邪を引き合いに出すのか。死傷者数が多いからではないかと思うが、100年前と今では時代背景がまるで違う。
 まず、スペイン風邪流行時と今では医学の進歩がまるで違うので同列には論じられない。さらに決定的に異なるのはスペイン風邪流行時は第一次世界大戦中であり、兵士から感染が拡大していった。塹壕戦で感染が広がり、戦死者よりスペイン風邪による感染死者の方がはるかに多かったと言われている。
 このようにスペイン風邪は特殊な条件下で感染爆発が起きているわけで、今起きているCOVID-19の引き合いに出すのは妥当ではないし、間違ったイメージを植え付けることになる。

2.データの使用法に疑問

 上記と似たことは結構行われている。データを都合よく引用する手法で、大体、スペイン風邪の分析データからして矛盾しているという指摘がある。
 今回、もっとも疑問に感ずるのは感染(陽性)者数の発表だ。これには2つの問題がある。1つは感染者数の信用性であり、もう1つは感染者数の持つ意味である。

 感染者数という場合、検査総数中の感染者数と、実際に感染した人の数の2つがある。現在使われている感染者数は多くの場合、前者の検査した中で分かった感染者数という意味で、これは感染者の実数とは別である。

 同じような意味で陽性率という言葉が使われている。これはPCR検査の結果、陽性だと分かった人の数をPCR検査数で割った数字で、この陽性率が日本は高いからもっと下げなければ今後爆発的に感染者が増える危険性があると言ったノーベル賞学者のY氏が自身のサイトで指摘した。
 人間は権威と数字に弱い。ノーベル賞受賞学者という権威と陽性率という数字を出されて指摘されれば誰でも信じたくなる。ところが、上記の指摘には学者として犯してはならないミスがあった。
 日本の場合は、PCR検査数が他国(欧米、韓国)に比べて圧倒的に少ないから、一概にEUや米国、韓国の陽性率と比較するわけにはいかない。割合だから総数と関係ないと思われるかもしれないが、比較するなら基礎条件を同じにしなければならない。例えば人口10万人当たりの検査数に直して比較するなどの。
 Y氏もそのことに気づいたらしく検査数が増えて、陽性率は下がったとサイトで訂正していたようだが。

 危機を喚起する(煽るとまでは言わないが)意味だろう、実際の感染者数は現在分かっている人数の10倍以上存在していると、数日前に関西の大学関係者が発表した。
 ここでも疑問を感じざるを得ない。感染者数が持つ意味をどう捉えるかだ。今ではこのウイルス(SARS-CoV-2)を撲滅したり、この「ウイルスとの戦争」に勝利できると考えている人は少ないだろう。特に「専門家」は。
 「ウイルスと共存」するというのが今、大方の見解になっている。そうなると感染者数が持つ意味が変わって来る。例えば風邪に罹った人が何人いるかなどという議論をする人がいないように、感染者数よりは重症者数、死亡者数の方が持つ意味が大きくなる。
 どの数字を重視するかということは、その後に来る、対策の立て方に大きく影響してくるからだ。
                          (2)に続く


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